作家 林真理子さん

【柴門】恋愛観も、昔と今では変わってますよね。私たちの時代はトレンディードラマのようなセリフを、普通の男子が平気で使っていたでしょ? それが、最近は「男性に口説かれたことがない」ってこぼす女性が多い。

【林】わかる、わかる。知り合いの男子が、彼女がほしいというので紹介したら、携帯の番号すら聞いてない。「ちゃんとしなさい」って叱ったところで。

【柴門】女性のほうも仕事が忙しくて、恋人を見つけて、デートして、という時間をつくるのが、すごく重荷になっちゃうんじゃないかな。

【林】かといって、不倫にも走らない。バブルの時代って、妻子ある男性と若い娘の不倫が多かったでしょ?

【柴門】確かに。リカは勤務先の妻子持ちの社長と付き合っていたし。

【林】今だと妻子持ちの男は家庭を持つおばさんと付き合う。あるいは、私の小説『不機嫌な果実』のように、人妻と独身男性とか。

【柴門】私のマンガでは、昨年、ドラマ化された『同窓生』がそう。人妻が高校時代に付き合っていた同級生と再び恋に落ちる話なんです。40歳って人生のリセットをしたくなる年齢で、実の折り返しと思っていたんだけれど、後ろにずれてる感じがするんですよね。際、まだやり直しができる。『Age,35』という作品を描いた20年前は、35歳が人生の折り返しと思っていたんだけれど、後ろにずれてる感じがするんですよね。

【林】ともあれ、不倫は面倒なので、独り身の男性といい恋愛をしてほしい。

【柴門】恋愛すると毎日が楽しくなりますよね。仕事への活力もわいてくる。

【林】相手が見つからないなら、とりあえず週1回、ご飯を食べてセックスする男性がいるだけで違う。仕事のガス抜きになって、心に余裕ができるから。

【柴門】リカなんてまさにそうね。男性のうわさが絶えず、「セックスしよ!」とカンチ(永尾完治)を誘う。当時、このセリフがものすごく話題になって。対照的なのは関口さとみ。男性関係には潔癖で、そこそこ働いたら家庭に入っていい奥さんになりたいと思っている。さとみのような生き方は普遍的なのかも。

【林】ドラマでさとみ役を演じた有森也美さんが言ってましたよ。あの役をやっているとき、「あなたの生き方は嫌い」と同性からよくなじられたって。

【柴門】自分と重ねてしまうのかな。もっとも、働く女性だって結婚願望はあると思うので、相手がいないなら婚活パーティーにどんどん行きましょう。ノーベル賞をとった天野浩教授夫妻は、お見合いパーティーで出会ったんですってね。

【林】宇宙飛行士の毛利衛さんも結婚相談所で知り合ったと聞いたわよ。理系の男性はまじめで、浮気しなさそう。

【柴門】そうよね。それに女らしさを押し付けない感じもあって、仕事に理解がありそうだし。結婚相手にいいかも。

【林】あと、私たちぐらいの年上の女性を頼るのも手よね。知恵も人脈もあるし。私だったら、相手を見つけて、デートの段取りもしてあげる(笑)。