給料が半減しても転職したかった

Yelpに転職したのは2007年。その直前まで大企業の人事部門に勤めていたので給料は半減しました。それでもYelpで働きたかったのは、ベンチャー企業の将来性を見込んだわけでなく、私自身がユーザーとしてYelpのサービスが大好きだったからです。

Yelpのサイトでは、飲食店、ショップ、病院はもちろん、靴の修理、ネイルサロン、自動車整備工場など、ありとあらゆる分野のローカルビジネスについてレビューが掲載されています。私は2005年から投稿者の“Yelper”となって1000件以上のレビューを書いていたので、この転職はごく自然なものでした。そのうえ私はスーツを着るのが嫌いなので、大企業と違ってジーンズ姿で出社できるのもポイントの1つでした。

Yelpに入社してすぐ、ワシントンDCで最初のコミュニティマネジャーになりました。コミュニティマネジャーは、その街で“Yelpエリート”と呼ばれるヘビーユーザーのコミュニティをつくり、パーティーやイベントを主催する“Yelpの顔”です。

当時、コミュニティマネジャーは全米に5人ほどしかいませんでしたが、現在は120人を超えています。Yelpの社員も50人ほどだったのが、7年あまりで2500人を超えました。

私はそのまま東海岸のコミュニティマネジャーを監督する立場に昇進し、それからYelpのヨーロッパ進出に向けて足がかりとなる準備を進めるために2年半ほどロンドンに住みました。その間にフランス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各国で新規開拓を進めたのです。

新市場ではまず、現地スタッフを採用します。パーティーやレビューを準備する「スカウト」と呼ばれる人たちとコミュニティマネジャーです。同時にサイト立ち上げの準備を進め、準備が整ったところでサービス開始を発表します。

たとえば日本で、コミュニティマネジャーを採用するなら、少なくとも次の条件は満たさなければいけません。英語が話せること、日本語が話せること、文章を書くのが好きなこと、好奇心が旺盛で、素敵なお店や面白いサービスを見極めるセンスがあること……などです。その街で最もクールな存在で、幅広い分野に人脈のあるタイプが求められます。

構成=伊田欣司 撮影=向井 渉