2016年10月から新たにできる「106万円の壁」とは?

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パートのような短時間勤務でも、社会保険の適用が広がることに

2年後の2016年10月以降は、パート勤務の人の社会保険への加入要件が変わることが決まっています。「週20時間以上の労働時間があり、月収8.8万円以上(年収106万円以上)の人」は、社会保険料を負担することになります。これにはさらにいくつかの要件があり、「1年以上の勤務期間が見込まれていて、企業規模501人以上の会社で働く場合」に限定され、「学生は適用除外」となります(図表参照)。現在の「130万円の壁」が、106万円まで下がってくるのです。

「106万円の壁」の施行当初は、中小企業でパート勤務をしている人には適用されませんので、そういう人の場合は、現在のまま130万円を意識して働けばよいことになります。しかし、施行から3年後には適用要件の見直しが行われる予定で、適用対象が広がっていくことが予想されます。

これは、社会保障と税の一体改革の一環である年金制度の改正事項として、2014年8月にすでに決定していて、社会保障を支えるために広く保険料を負担しようという考えが根底にあるものです。

アベノミクスで「少子高齢化社会を支え、景気拡大をはかるためには、女性の労働力が必要」ともてはやされても、配偶者控除廃止・見直しの動きや、社会保険料の負担範囲を広げる方向など、より厳しい環境になっていくことが予想されます。そうなったときのことを考えると、やはり「世帯の中で考えた場合、妻も働く役目を担う」という選択肢をベースに、その際の働き方を「これまでの壁を超えない抑制方向ではなく、壁を超えても働いていく方向に切り替える」という発想をすべき時期に来ているようです。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり