移りたい認可はない……という現実も

新制度以前から、超激戦区の自治体には、認可保育園をビルの中につくって待機児童対策をしてきたところがあります。そんな自治体では、すでに多くの認可保育園が施設環境的には認可外と大して変わらないように見えます。もちろん、認可保育園のほうが有資格者を多く配置するしくみになっているので、新しく保育施設をつくるなら認可保育園として整備されたほうがいいし、保育料の点からも保護者は助かります。ただ、自治体がそこに安住してはならず、本当に就学前まで安心して通える保育を追い求めてほしいと思います。

在園する認可外が認可になったら?!

認証保育所が認可保育園になるとき、在園児はどうなってしまうのかという相談も「保育園を考える親の会」にはありました。

認可保育園の入園事情が厳しい地域の入園選考では、指数の1点を争う状況になっています。認証保育所の在籍児童が、認可への移行に際し、「がらがらぽん」でこの選考にかけられてしまうと、園を出されてしまう恐れがあります。そんなことになったら、親子の生活は激変してしまいます。

結局、相談のあった自治体では、保育の必要性の認定が受けられる区民であれば移行後も継続して在籍できることになりました。もちろん、違う立場からの意見もあるかと思いますが、各家庭が想定している生活の継続性を配慮すれば、激変緩和は必要だと思います。

その一方で、いずれ園庭のある認可保育園に移りたいと思う人の中には、今いる認可外が認可になることを歓迎できないという人もいるはずです。保護者はしっかり情報を集め、現地を見て選ぶ必要があります。

こんな屈折した世の中に誰がしたのか。早くストレートな待機児童対策が行き渡ることを願うばかりです。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。