3歳以降の幼児期にふさわしい環境は保障できるか
一方で、戸惑いもあります。
これまで認可保育園というと、園庭があって外見が幼稚園と比べても遜色のない施設を連想しました。でも、認可外保育施設が認可保育園になった場合、やはり園庭はない場合が多いでしょう。
園庭がなくても、近くの公園などによくお散歩に行って、子どもたちに戸外遊びや自然とのふれあいを十分にさせてくれている施設もありますし、立派な園庭があっても「子どもが遊んでいるのをめったに見ない」という認可保育園もありますがから、園庭の有無だけで質を語ることはできません。でも、園庭があるほうが、子どもや保育者にとって、より健やかで豊かな保育環境が整いやすいことは確かなのです。
また、認可保育園や幼稚園では、幼児に対して、集団遊びや共同的な活動を通して社会性が培われるように保育(教育)が行われています。従来、低年齢児中心だった施設の場合、同様のクラス編制や活動が可能かどうかという課題もあります。
つまり、認可施設・事業の範囲が広がるのはよいことなのですが、その質、保育の実態はこれまで以上に多様になっていくことが予想されるのです。しかも、待機児童が多い地域では、保護者は「質で選べない」切羽詰まった状況に追い込まれています。
「保活」の常識が変わる?
待機児童の多い地域の自治体では、入園選考(利用調整)で、認証保育所などの認可外で待機する児童に加点をつけて、認可保育園に移りやすいように配慮してきました。そのため、保護者の間でも、まず認証保育所にお世話になって、その加点をもって認可保育園に転園するというコースが一般化しています。
ところが、認証保育所が認可保育園になってしまうと、このコースには異変が生じます。なぜなら、通常、認可保育園から認可保育園への転園は優先順位が低く、認可外からの転園に比べて不利だからです。
今、保護者の間で密かにささやかれているのは、「気が進まない認可に入ってしまうよりは、認証保育所に入って点数を上げて、本当に希望する認可への転園を狙うほうがいい」というアドバイスです。
とはいえ、認証保育所で待っているうちに希望の認可に入れないまま子どもが成長してしまう可能性も大いにあります。低年齢児にまじって同年齢のお友だちと遊べないわが子に心を痛めることになるかもしれません。2人目がほしいのに2人の子どもを認可外に通わせる経済力がないという家庭もあるでしょう。保護者の迷いは深くなるばかりです。