記憶から削除せよ
では、彼女らはどんな対応策を身につけたのか?
その1つが、「鈍感力」です。
あるメーカーの女性課長はこう言いました。
「『部長試験はまだ君には早いんじゃないの?』と面と向かって言われたことがありました。それも嫌らしいことに『君のためを思って言っているんだよ』なんて一言付きで。ムッとしましたが、速攻で記憶から削除しましたよ。『アドバイスありがとうございます』ってニッコリ笑いながらね」
これです。まさに、女性管理職が身につけるべき「鈍感力」とは。
別の女性課長からは、こんな話も聞いたことがあります。
「かつて仲良しだった同期が部下になったのですが、彼女はいつまでも私を『友達扱い』。会社の戦略とは正反対を行くプランばかり出してくる。何を言っても暖簾に腕押しのため、私は、『聞いたふり』作戦に打って出ることにしました」
すなわち、その同期の部下が「こうしたい、ああしたい」と言ってくると、「うん、それは次週会議で話しましょう」といい先延ばしする。
そして次週会議で「シレッと却下する。これを何度か繰り返していれば、いい加減、相手も、自分の方向性は間違っているのだと気づきます」。
この女性課長はこうした「スルー力」を発揮することで、部下や周囲の人からある程度嫌われることは「想定内」、「痛くも痒くもない」とさえ言います。
「だいたい、周囲の人間の全員から好かれる人なんて存在しないでしょう。ましてや管理職なんて上から振ってきた戦略を部下に押し付ける『嫌われ役』。嫌われて上等、嫌われるのが仕事くらいに思っていないと、身が持ちませんよ」
そう言う彼女の表情は、まさに管理職としての威厳に満ちていました。
そう、結局私が本稿でお伝えしたいのは、女性はエラくなったら、たとえ誰から嫌われても、ミッションを貫く腹をくくることが大事だということです。
管理職は非組合員。もはや経営側の人間なのですから。個人的な感情に揺すぶられている場合ではないと思うのです。
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。