試験会場に女性は1人だった

商業高校を卒業して地元埼玉県の短大に入った私にとって、運転士という職業は自分がなるとは想像していなかったものでした。高校も短大も商業科だったので、将来は会社の事務系の仕事をするんだろうなあ、とぼんやり考えていた程度でしたから。でも、実際にはパソコンの前に座りっぱなしの仕事ではなくて、もっと自分がわくわくするような何かはないかな、という気持ちもあって。

そんな思いを抱えながら就職活動の時期が近付いてきたとき、電車のいちばん前の車両でどんどん風景が流れていくのを見ながら、電車を運転するのってどういう気分なんだろうと思ったんです。運転士さんは制服もびしっと着こなしていてかっこいいし、自分もそういう仕事ができたらいいな、とふと思いついたんですね。それで、秩父鉄道の入社試験を受けてみることにしたんです。

でも、当時の秩父鉄道では女性運転士は募集していなかったんですよ。試験会場にいる女性も私だけでしたし、配属先の希望に「運転士」と書いたら、試験を監督している社員の方から「女性の採用は本社の事務か、現場であれば駅員のみです」と言われちゃって。

それで入社後は「御花畑」の駅に駅員として配属され、まずは出札と改札の業務をしていました。お客様を乗せた電車もそうですが、石灰石を運ぶ貨物列車が駅を通っていくと、あそこからの眺めはどんなだろうと、とりわけ感じていたものです。