セクハラ上司の対処法

僕が話し終わるまで、彼はじっと聞いていました。そして、何度もうなずきながら「とてもいい話ですね。『人生の宝物には違いない』という表現に惹かれました」と率直に共感を示してくれました。

あの一瞬、僕と彼は人間同士の交流ができたのだと思います。少なくとも「そんな寒いタイトルの文章を書いちゃって」と冷やかしてくるような人よりは、彼のほうが人として近いような気がするのです。

セクハラおじさんにも同じような対処が有効だと思います。仕事上などでどうしても付き合わなくてはいけない上司などの場合は、周りに人がいないときを見計らって、「結婚しているかどうかだけで私を見ないでください。私はこの仕事が本当に好きなんです」とストレートにぶつかってみてはいかがでしょうか。「おお、こわい~」なんてはぐらかすダメ上司ならば見限って、異動のときまで我慢するか、組合や役員に裏で手を回して彼を異動させましょう。でも、仕事人間の上司は意外なほど真顔で受け止めてくれると僕は思います。

排除や差別は男女の間だけではありません。細かく見ていけば、すべての個人間に存在する壁なのだと思います。その壁を乗り越えるためには、より強い危機感と動機を持っているほうがリスクを背負い、先に「腹を割る」ことが不可欠なのです。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/