「大門さんみたいにはなれない」
仕事と育児の両立は難しい、とよく言われます。私自身、いつも一杯一杯だったのですが、ある時子育て中の部下のお母さんから「娘は大門さんみたいにはなれないと言っていました」と聞き、ショックを受けました。この一件を機に、仕事も育児もバリバリこなすイメージで見られ、「私にはできない」と他の女性社員に思われてしまうことを避けなければならない、と思うようになりました。
それからは、責任ある立場にいても可能は限り早く帰宅するよう心がけ、限られた時間の中で、質の高い仕事ができるように努めました。
最近、うれしいことがありました。15年前に出産・育児で退職した同期の女性がパートとして職場に戻ってきてくれたのです。最初は長いブランクを経て、仕事復帰することに不安を感じていた彼女ですが、すぐに立派な戦力になり、今では欠かせない人です。彼女も含め、育児を経験した女性は限られた時間の中で効率的に働く癖が身についています。
私が執行役員になって取材を受けたり、他社の女性たちから話を聞かせてほしいとたくさん問い合わせを受けるのは、まだまだ日本では女性役員が少ない証拠だと思います。これから役員や管理職を目指す女性たちのために、できることは最大限していきたいと思っています。
大下明文=構成 的野弘路=撮影