昇進試験にかけた

警部補の昇進試験が近くあることを知ったのは、そんなふうに感じていた矢先のことでした。警視庁では警部補試験に受かって昇任すれば、職場が別の署に移ることになります。仕事を辞めるか、昇任して捜査第一課を出るか――。本当は刑事を続けたかったけれど、このときだけは昇進試験を受けて環境を変えることに賭けたんです。警察官をどうしても続けたかったから。勉強に使える時間は通勤電車と昼休みのみ。集中して勉強に取り組みました。

結果的に私は女性枠2人のその試験に受かって、渋谷警察署の交通課の係長として異動が決まり、捜査第一課を出ることになったんです。今から振り返れば、あの試験に受かっていなければ警察官を辞めていたかもしれません。そうすると後に捜査第一課に戻って、管理官として捜査を指揮する立場になることもなかった。本当に大きな決断だったと思います。

そうして子育てをしながら働く中で、私が自分に言い聞かせてきたのは、「甘え」と「できないこと」の違いを常に考える、ということでした。

できないことをやろうとすれば無理が生じる。でも、子供がいるからという理由でできることをしなければ、それは甘えになってしまう。いま自分の目の前にある仕事に取り組むとき、それがどちらに当たるのかをいつも問いかけてきたんですね。子育てで周りに迷惑をかけることがあっても、その姿勢を貫いていることによって理解してもらえるようになったと感じています。