キャリアを繋ぐことの大切さ
私が刑事として働いた頃は、女性捜査官が現場になかなか出してもらえなかったり、「女に捜査指揮ができるか」という視線もあったりする時代でした。その中で現場に出してもらえたときが、自分の力を認めてもらえるチャンスでしたから、「毎日が勝負」の気持ちで仕事に臨みました。男の人の2倍、3倍の結果を出さなければ、認められないところがあったのです。
いまは幸いにも――特に昨年の警察改革をめぐる有識者の提言以降――警察全体に女性をしっかり登用しようという流れがあります。毎年のように女性警部が誕生しているし、警部補や警視の数も目に見えて増え、これまで女性がいなかった機動隊の副隊長などにも女性が登用されています。女性側の意識も変わり、やる気にも繋がっています。
一度は辞めなければならないのではと悩んだことのある私にとって、そして今でもライフイベントを経ながら働いている多くの女性たちにとって、キャリアを繋いでいくことは切実なことだと思います。
ただ、どのように環境が変わろうとも、与えられる仕事に懸命に取り組むことが最も大切であることは同じ。結果を出すことによってキャリアを積み重ね、同時に繋いでいく。そのことの中から、仕事に対する使命感や喜びが生まれてくることが、どんな時代も変わらない仕事の本質だと思うからです。
●手放せない仕事道具:携帯電話
署員からの事件報告等に24時間対応するため
●ストレス発散法:ジョギング
署長として、管内治安維持のため外出先も限られているため、近くの公園をジョギングして汗を流すことで、オンとオフの切り替えをしている。
●好きな言葉
人事を尽くして天命を待つ
1955年、群馬県出身。75年に警察学校を卒業後、杉並警察署交通課に配属。警視庁捜査第一課、管区警察学校の教官等を経て再び捜査第一課へ。性犯罪捜査を多く担当する。2007年には3度目の捜査第一課で、女性初の管理官として捜査を指揮した。13年の交通捜査課理事官を経て14年より現職。
稲泉 連=構成 向井 渉=撮影