――いつ頃からそういう哲学をお持ちですか?
私自身が苦しんだときです(笑)。40代前半で離婚をしまして、一人になって、考える時間ができたんですね。もちろん経営者ですから、会社では悩んでいるなんて顔に出しませんが、家に帰ると、私はいったい何のために生きているんだろう、と悩んだときがありました。その感情を整理するのに2年ぐらいかかったのですが、その過程で気がついたんです。過去と未来ばかり見ていてもだめなんだな、心のエネルギーのかけ方が間違っていたんだなって。そのときに、助けてくれる女友だちが出てきて、横にいてくれて、助けられました。これもご縁なのかなと思います。
人生の大きな流れが変わるときがあるでしょう? 私はランズエンドに入社した直後がそうでした。個人的なことがいろいろ変わったんですが、その頃に出会った女性たちとは本当に仲がいいんです。思えばあの時期は、私の人生に新しい人が現れてくる機会だったのかな、と思います。
――同じ目標に向かって進む友だちを見て、「あの人はうまくいってて羨ましい」と感じることってありますよね。
妬みや執着、怒りというのは、自分の心の中にある不安の裏返しじゃないでしょうか。成功している人がうらやましい、と思うとき、実際に見ているのは成功した人ではなく、自分自身なんですね。ということは、そういう気持ちを振り払うためには、自分の心の中を見てお掃除をするしかないわけです。
他人のことを「いいなあ」「羨ましいな」という気持ちが出るのは、自分の心の中に何か心配ごとや悩みがあるとき。そんなときは「ちょっと待って」と心を落ち着かせて、「私の花を咲かせればよくて、彼女は、彼女の花を咲かせて欲しい」と思うようにするんです。そうすれば豊かな気持ちになれますよ。
でも、聖人ではないから、怖いと思うときもある。そういうときは、なるべく、ひとりの時間を持つようにします。心を落ち着かせて、瞑想して、「今」に集中します。「あの人出世していいな、それに比べて私はこの先どうなるのかしら」と先のことを心配すると、あせる気持ちがでてしまう。そういうときは、今できることを考えて、彼女を助けてあげよう、という気持ちに切り替える。
実際に友だちに何をしてあげられるか、と考えると、必要なときに、誠意を持って話を聞いてあげることぐらいかな。あとは当たり前のことですが、自分がやってほしいと思うことを他人にもする、自分がやられたくないことはしない。そして、愛情をけちらないこと、ですね(笑)。
※このインタビューは『女友だちの賞味期限』初版発行時の2006年に収録した内容の再掲です。
1959年愛媛県生まれ。津田塾大学卒業後、アメリカ・オレゴン州立大学心理学部へ転入。1985年に帰国し、マテルジャパン、ディズニーストアジャパンを経て、1999年、米国最大手通販アパレルブランド、ランズエンドの日本支社長に就任。2007年、通販会社、DoCLASSEを立ち上げ、代表取締役に就任。現在カタログ会員数約80万人、首都圏を中心に8店舗の直営店を展開。日興アセットマネジメント社外取締役。キリン株式会社取締役。2005年、ウォールストリートジャーナル・アジア版で「アジアで最も注目すべき10人の女性」に選出される。
聞き手=糸井 恵