「大衆の憧れ」を目指す必要はない
江原氏は、自由が丘がかつてのような、大衆向けの「憧れの街」というイメージを追い求めるよりも、現在の住民の満足度を引き上げていくような街づくりを目指していくべきだと主張する。
「SUUMOのランキングで近年順位をあげている、立川や船橋などのエリアは、商業施設を含め、相当大規模な再開発をしている。それと比較すると、ミューズスクエアの規模自体は控え目かもしれない。ただ、街の住民が本当に求めるライフスタイルが提供され、住民同士のつながりや安心感が醸成されれば、自由が丘らしい発展が期待できると感じている」(江原氏)
SUUMOの「住みたい街」の順位に一喜一憂せずとも、住民にとっての自由が丘のブランド価値は、依然として高いものがあるということだろう。しかし、顧客ニーズの変化を先回りする形で、高層マンションや大規模な商業ビルを建設し続けていけば、近隣の二子玉川や武蔵小杉との差別化がますます難しくなるし、そもそも街が持っていた個性がなくなってしまう。一方で、このまま低層住宅や路面店の価値を訴求し続けていても、現代のトレンドから孤立してしまう可能性がある。
自由が丘は、マスからの支持をある程度諦めて、富裕層が住む街として地価を上げていく方向に進むのか。それとも、商業地としての魅力を引き上げ、かつてのように大衆が憧れる消費文化の発信地としての地位を取り戻すのか。
ミューズスクエアの開業は、その試金石なのかもしれない。
1996年生まれ。米アリゾナ州立大学に留学後、同志社大学卒業。ジャーナリストとして活動開始。経済メディア→小売専門誌→フリーに。教育、小売、海外スタートアップ、国際情勢、インフラなど多岐にわたるテーマで寄稿する。過去携わった書籍に『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)、主な特集記事に『出生数75.8万人の衝撃』『奈良のシカ』(JBpress)『リニア20世紀最後の巨大プロジェクト』(NewsPicks)『精肉MDの新常識』(ダイヤモンド・チェーンストア誌)など。