カフェ巡りの「有閑マダム」がいなくなった
神奈川大学経済学部教授で商店街の研究を続ける寺嶋正尚氏は、かつての自由が丘人気を支えていた、経済的・文化的に豊かな顧客層が少なくなったのではないか、という仮説を立てる。
「自由が丘に最も活気があった90年代、街の人気を牽引していたのは、30〜50代の専業主婦だったと考えられる。トレンドに敏感で、茶道などのお稽古事にも精を出し、家計の消費をリードする層だ。お稽古事の帰りに、モンブランでケーキを食べたり、カスタネットでスパゲッティを食べたり……。幼稚園受験や小学校受験の塾に子供を連れて来て、そのすき間時間にブティックやカフェで時間をつぶすというケースもあった。総じて、これらの専業主婦層は時間にもお金にも余裕があったと言える」(寺嶋氏)
確かに、近年は共働き世帯が一般化したことに加え、いわゆる「有閑マダム」と形容できるような余裕のある生活スタイルは、庶民には程遠いものになった印象がある。
「実際、全国で茶道・華道の人口が激減している。かつて自由が丘の人気を支えていたような、時間にもお金にも余裕がある専業主婦層が、街の消費を支えるほどのボリュームゾーンではなくなっているのではないか」(寺嶋氏)
中目黒、代官山も人気が下降
SUUMO副編集長の江原氏も、近年の「人気の街」は、かなり現実的な予算感の中で動いている、と分析する。
「大宮(2026年2位)や船橋(12位)、立川(17位)など、近年ランクアップした地域は、軒並み大きなターミナル駅を持っている。逆に、自由が丘や中目黒、代官山といった私鉄沿線のおしゃれな街は相対的に順位が下がっている。一番の要因は、やはり住宅費の急騰。かつては『頑張れば住める“憧れの街”』と捉えられていた自由が丘も、今や限られた富裕層を除けば手が出せる状況ではない。一方、郊外の主要駅は再開発でより便利になり、住宅費もまだ現実的であることから、『住む街』の人気が分散しているといえる」(江原氏)
SUUMOのランキングはあくまで相対的なものであり、他の街の順位が上がれば、当然これまで高順位をキープしていた街の順位は下がってしまう。
江原氏が「代官山や中目黒と同様、自由が丘も『おしゃれで遊びに行って楽しい街』としては非常に人気が高いが、住む街として考えると、高嶺の花になりつつある」と分析するように、近年の「住みたい街」という尺度には、“予算内で実現するかどうか”の重要度が高まっている、といえそうだ。