「本物のバカ」が生み出す職場の悲劇

以上が「許せるバカ」について。では、職場において「許せないバカ」とはどんな存在でしょうか。これはハッキリ言って「無能」と同義です。性格の良し悪しは関係ありません。業務に不適格なので同僚にも顧客にも迷惑をかけてしまいます。

俗に、「働きアリの法則」などと言って、「優秀でよく働くのは全体の2割で、6割は普通で、2割は怠けている。人間組織も同じだ」なんて指摘されますよね。僕が言っている「許せないバカ」はそんな相対評価の話ではありません。比較的怠けているように見えて生産性が低いのではなく、絶対的に不適格で生産性はゼロに等しい人のことです。もちろん、その人はどんな場でも無能なのではなく、違う場所に移れば能力を発揮することもあるでしょう。

だからこそ、一刻も早く配置転換や離職を促すのが本人も含めた関係者全員のためなのです。どうしても無理ならば、周囲に悪影響を与えないために「隔離されたデスクで新聞を読んでいるだけの仕事」を何十年もやってもらうしかありません。そんなことに耐えられる企業や個人はごく一部だと思います。

現実の職場では、明らかな採用ミスで紛れ込んだ「許せないバカ」が職場で管理者になっていることがあります。きっと彼の上司も「許せないバカ」だったのでしょう。会社が賞味期限を過ぎた兆候かもしれません。終身雇用や年功序列の慣行は必ずしも間違っているとは思いませんが、たまにこのような悲劇を生み出します。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/