マンガはフォーマットに差がありすぎる

なぜ国や時期によってコミック読書の効果は「マイナス」「たいして得点に影響を与えない」「プラス」などと分かれるのだろうか。ひとつには、ひとくちに「コミック」といっても、国によって内容も提供方法もまるでちがうから、という理由が考えられる。

飯田一史『「若者の読解力低下」というウソ』(インターナショナル新書)
飯田一史『「若者の読解力低下」というウソ』(インターナショナル新書)

日本でも、マンガ雑誌で読むのとコミック単行本で読むのとでは読書体験として異なる。また、日本のマンガとフランスやベルギーのバンド・デシネとアメリカのグラフィックノベルでは基本的なフォーマットもちがえば、1冊に含まれる文字数もちがうし、わかりやすさもちがう。これでは一律な結果が得られなくても当然だろう。

ともあれ「マンガだけ」読んでもPISAが求める読解リテラシーの広範さ、複雑さ、アウトプット重視の傾向には対応できない。また、「読書時間は30分くらいまでがいちばん成績が上がる」――それ以上は、勉強時間を含むほかの活動を圧迫する――という研究結果からすれば、30分以内に接触する文字量・語彙が多いほうが学習効果は高いことになる。

したがって、簡単なマンガだけ読んでもさほど有効ではなく、「負の影響がある」「とくにプラスにもマイナスにも働かない」とする結果が時折出るのもふしぎではない。もっとも、たとえば日本のマンガでも『HUNTER×HUNTER』や『呪術廻戦』の中盤以降のような、ややこしい設定・展開の物語ならまた別かもしれない。

読書ゼロより好きなマンガを読むほうがいい

しかし、先ほども書いたように読書媒体の多様性が高いほうが読解スコアは高い。また、複数の読書研究で、コミックの読書がそれ以外の読書あるいは学習への足がかりになることが指摘されている。そういう意味では、やはり、何も読まないよりは興味が持てるマンガを夢中になって読んだほうがいい(コミック単体では読解スコアは上がらないにせよ)。

なおPISA2018年調査の報告書では、学校で読んだテキストの長さごとの読解スコアの成績が載っており、長いほうが点が高い(図表2)。

【図表2】学校で読んだテキストの長さ別の読解スコア(OECD平均・PISA2018)
出典=『「若者の読解力低下」というウソ』(インターナショナル新書)

これもそもそも学力が高い層が長いテキスト(教科書など)を読める学校やクラスにいるケースが考えられるから、「長い文章を読ませたほうが読解リテラシーが身につく。短い文章だけ読んでいてもダメだ」と解釈するのは早計だ。

とはいえ、読める(し、本人も読みたい)のであれば、短いテキストだけでなく、長いテキストも読むにこしたことはないだろう。同報告書では「長さと同じかそれ以上に、中身も重要だ」とも書かれている。それはそうだろう。

整理すると、コミックの読書が単独でどうかを考えるよりも

・ジャンルや媒体、長さは多様なほうがいい
・フィクションも読んだほうがいい
・長いテキストも読んだほうがいい

という前提に立って、コミックも「いろいろ」に含まれるひとつとして推進するのがいい、と言える。