マンガの影響の正負は一概に言い切れない

いったいどちらが本当なのか?

PISA2009の報告書では、生徒が読む資料の種類(雑誌、コミック、新聞、フィクション、ノンフィクション、実用書など)の多様性の度合いによって、読者を4つのグループに分けて分析している。これによるともっとも多様でないひとたちがもっとも読解リテラシーのスコアが低く、もっとも多様なひとたちがもっともスコアが高かった(図表1)。

【図表】「何を読むか」の多様性とPISA読解スコア(2009年)
出典=『「若者の読解力低下」というウソ』(インターナショナル新書)

PISAは多種多様なテキストを読解させる試験なのだから、いろいろなテキストを読み慣れているほうが点が高くなるだろうと思うわけだが、重要なのは、PISA2009の分析では、フィクションの書籍を定期的に読むことがスコアと強い正の相関があると確認された一方で、コミックを定期的に読むこととスコアとのあいだには負の相関、つまりマイナスの影響がある、とされたことだ。

ただ、SESなどによる差や影響を見分けながら分析すると、コミックや雑誌、新聞を読む生徒は、まったく読まない生徒よりも読解リテラシーが高いことがわかった。

つまり「文字の本を読んだり買ったりするのが当たり前ではない環境に育ったのでコミックしか読んでこなかった」ひともいれば、「親の社会経済的地位は高いがコミックしか読まない」ひともいるわけだが、そういう環境あるいは性別などからくるちがいを統計学的に取り除いてみると、コミックの読書はマイナスではなかった。

2018年調査「日本の場合はプラス」

しかし、紙の本で(または紙+電子で)小説をよく読むことが読解力スコアを大きく引き上げる(フィクション効果)のと比べると、コミックをよく読むことは、読解リテラシーへのプラスの影響はゼロに近かった(*1)。

*1:Jerrim, J., & Moss, G. (2019). “The link between fiction and teenagers’ reading skills: International evidence from the OECD PISA study.” British Educational Research Journal, 45 (1), 181-200.

2015年に発行されたPISAのジェンダーに関するテーマ別報告書『The ABC of Gender Equality in Education』でも、簡単なもの、短いものだけを読んでも高い読解リテラシーにはつながらないかもしれないが、「何も読まないよりはマシ」だと位置づけられている。読むのが苦手な生徒に対して、レベルに合わないむずかしい本をムリヤリ読ませて読書をきらいにさせるよりも、とにかく読むほうがいい、と。

2018年調査を分析した『21st-Century Readers』などの報告書ではおもにデジタル読書にフォーカスしており、コミックと読解スコアについてはとりたてて記載されていない。PISA的にはあまり重要な論点ではないのだろう。

日本の生徒も、PISA2009では、フィクションや新聞を定期的に読む生徒は読解スコアが高い傾向がはっきりと見られたものの、「コミックを定期的に読む生徒と読まない生徒のあいだには、さほど得点の差は見られない」という結果だった。

ところがPISA2018の調査では「新聞、フィクション、ノンフィクション、コミックのいずれも、よく読む生徒の得点が高い」ことが確認され、日本の場合はコミックの読書によるプラスの影響があった。