4期目を狙う習政権は「経済より政治」

中国の景気は低迷が続いている。その最大の要因は、不動産バブルが崩壊したことだ。今なお、マンションなど新築住宅価格は下げ止まっていない。土地利用権の譲渡益は減少し、地方政府の財政は悪化した。地方融資平台(LGFV)と呼ばれる、公的な投資会社や不動産デベロッパー、家計などの不良債権も増加した。

一方、習近平政権は、2027年の党大会で4期目を確実にしようとしている。綱紀粛正や思想教育など、経済よりも政治体制(権力基盤)の引き締めに関心が集中しており、経済政策にはあまり力が入っていないようだ。その結果、EV(電気自動車)などの過剰生産能力の問題は深刻化し、雇用や所得の状況は悪化した。

8月、16~24歳(学生を除く)の若年層失業率は18.9%だった。これは、ピークだった2025年8月に並ぶ水準だ。中国経済全体で需要の不足は深刻と考えられる。

この2年で200店舗超に急拡大

中国経済の厳しさが増す中、ゼンショー傘下のはま寿司は、ここ2年程度の間に店舗数を急速に増やした。2014年、はま寿司は中国に進出した。2020年12月の時点で中国店舗数は12店だった。

2024年春以降、出店は本格化した。2024年3月、中国本土では約50店だったのが、今年3月末には186店、7月時点で200店を超えた。この間、日中関係は冷え込んだが、同社の戦略が、現地消費者の節約志向にマッチしたと評価できる。

2024年1月17日、中国・北京市内の商業施設にオープンした「はま寿司」の店舗
写真=時事通信フォト
2024年1月17日、中国・北京市内の商業施設にオープンした「はま寿司」の店舗

ゼンショーの対中戦略は、マーケティングの基本=「5A」で整理すると分かりやすい。5Aとは、デジタル時代の顧客の消費プロセスを表す枠組みをいう。まず、顧客はブランドを知る(Aware:認知)。次に、興味を持ち(Appeal:訴求)、口コミやSNSで調べる(Ask:調査)。実際に購入して利用する(Act:行動)。感想をSNSなどに投稿し、薦める(Advocate:推奨)。

このプロセスでは、推奨した顧客の発信が、次の顧客の認知につながるかがポイントだ。ゼンショーは、手ごろな価格に加え、中国政府の対日政策などのリスクも考慮し、はま寿司のマーケティング戦略を実施したとみられる。