マニュアル化できないカンとコツ
「既視感」を醸成できているか?
既知と同様におさえておきたい考え方があります。
それは「既視」です。既に見たことがあるような感覚、それを「既視感」ともいいます。既視感は、既知を引き出すうえで大きな威力を発揮します。
チームに既視感が蓄積されているほど、同じような仕事やトラブルに素早く対応できるようになり、無駄な残業を防ぐ力にもなります。
「そういえば、どこかで見たことがある……」
「あれ……似たようなトラブル、昔経験したことがあるぞ!」
「あの人、どこかで会ったことがある気がする……」
「このテーマ、詳しい人がどこかにいた気がする……」
そこから知識や経験や人的ネットワークをたどり、引き出して目先のものごとを解決した。皆さんも多かれ少なかれ、そのような経験があるのではないでしょうか。
そこまで大げさな話でなくても、たとえば名前も住所も覚えていないけれども、「国道1号線と県道が交わる交差点の、西にあるあのお店」など、景色や情景で覚えている名店などがあるかもしれません。何度も通っているうちに、場所のイメージだけでそのお店を記憶している。しかし、いまだにお店の名前はすぐに出てこない。
これは既視感でもって知識を記憶し、運用している状態ととらえることができます。
マニュアル化より大事なこと
既視感頼みの状態は、必ずしも悪いとはいえません。ものづくりの職人が活躍している現場における「カンコツ」(勘とコツをあわせた言葉。熟練の職人が培った長年の経験や勘にもとづいて行われている作業や、そのような状態を指す)なども、既視感の積み重ねで成り立っているといえます。
言葉でうまく説明できないけれども、イメージとして脳内に焼きついた、または体が覚えている知識や技術。それを後任の人たちに引き継ぐには、マニュアル化も大事ですが、すべてをマニュアルにできるとは限りません。そもそも、長年その仕事に携わっている本人ですら、うまく言葉にできないのですから。
そのような場合、後任の人の体験または疑似体験を増やすのも現実的かつ確実といえるでしょう。