国民の誰も望まない未来図
「30年ごとに見直しが行われる」規定(改正附則第6条第2項)もある。養子縁組の対象を旧宮家系に限らず、皇別摂家とか桓武平氏や清和源氏の子孫など、民間に実在する生物学的に皇統につながる人々にどんどん拡げて対処することも可能だ。
ほかに皇族がいなければ、元民間人の養子にそのまま皇位継承資格を認める制度変更もあり得る。
こうして今回の皇室典範の改正が空振りに終わらず、現実的に機能した場合、“皇統に属する男系男子”とされる民間人が、これまで皇室が大切に受け継ぎ、築き上げてこられた「国民と苦楽を共にする」高貴な精神や気風と無縁な形で、養子縁組という簡便な方法によって次々と皇族(?)になり、天皇(?)にもなるという、国民の誰も望まない未来図を想定しなければならない。
リベンジを諦めていない政治家も
では皇室の将来に希望はないのだろうか。もちろんそんなことはない。いくつか具体的な理由を述べておこう。
まず衆院でも参院でも、理不尽な典範改正への明確な反対が見られた。とくに参院ではそれが顕著だった。野党第一党の立憲民主党がきっぱりと反対に回ったことの意味は大きい。腰砕けになって賛成の方針を決めていた中道改革連合でも、有力な議員らがそれに背いた。自民党ですら賛成しなかった議員が複数いた。これらの事実は軽視できない。
これまで、民意との乖離が激しすぎると批判されてきた永田町でも、皇位継承問題を正しく理解している政治家がいて、この問題と真剣に向き合おうしていることが伝わる。
政府・与党が可決を急がざるを得なかった理由の一つは、改正内容のデタラメさが国会内にも広く知れ渡ることを恐れたためだろう。
とりわけ心強いのは、良識ある政治家たちが皇室典範の“改悪”を阻止できなかったことに敗北感を抱きながら、それでも決してリベンジを諦めていないことだ。
次に、メディアの論調は総じて健全だった。「読売新聞」をはじめ「朝日新聞」「日経新聞」「毎日新聞」など、全国紙はそろって養子案に疑問を呈し、多くの国民が支持する「女性天皇」という選択肢を議論の俎上に載せようとしない全体会議の姿勢を批判した。ブロック紙や地方紙も同様だ。例外は部数が限られる「産経新聞」と「世界日報」ぐらいか。テレビの扱い方もおおむねまともだった。
集中的に行われた報道を通じて、一般の関心も高まり、理解も深まった。