「愛子天皇」排除の決めゼリフはない
さらに興味深い事実がある。政府有識者会議の報告書でも衆参正副議長らによる全体会議の取りまとめでも、同じような趣旨の表現が繰り返されていた。それが附帯決議から外されている。
消えたのは、「今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」という、(即位を望まれていない秋篠宮殿下や悠仁殿下にとっても迷惑な)「愛子天皇」の可能性を排除するための決めゼリフだ。
もちろん、附帯決議に法的拘束力はない。だが、このような表現が附帯決議でも繰り返された場合、「報告書→取りまとめ→附帯決議」の三者がリンクして、“心理的なバリヤー”になるのは避けにくい。
上記の三者の中で最も重い位置にある附帯決議に、その表現が入っていない。これは歓迎すべきだ。
「愛子天皇」という未来への希望
敬宮殿下は8月1日から2日にかけて、伊勢神宮の二十年ごとの式年遷宮に向けた伝統行事である「お木曳」をご覧になるため、三重県にお出ましになる。また11月には、昨年のラオスに続く海外公務として、シンガポールを公式訪問されるご予定だ。
今後、そのように敬宮殿下がさまざまな機会を通じて人々の注目を集めるたびに、ご幼少の頃から天皇皇后両陛下のご薫陶をうけて育ってこられた直系の皇女として、その精神的な魅力がますます輝く。国民の期待と共感がより高まるのは、親=子の継承を基軸とすべき「世襲制」の必然だ。
その「国民の総意」をうけて、「安定的な皇位継承を確保」するために女性天皇、女系天皇を可能にする皇室典範の改正が「適時適切」になされたら、どうなるか。皇室典範がすでに採用している「直系長子優先」の原則(第2条)が、“男子限定”というゆがみを取り除き、しかも現在の欠陥ルールによる皇位継承順序を固定化することなく、そのまま適用される。
それによって、敬宮殿下がまさに「次代の天皇」として、皇太子になられる。その可能性は決して失われていない。
「愛子天皇」という未来への希望は、今回の最悪そうに見える典範改正それ自体の内部に埋め込まれている。
1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録」