「愛子天皇」待望論の「敵役」誕生
そうなると、養子にしても、その子どもにしても、愛子天皇の実現を阻止するための「敵役」になってしまう。今回の改正がゴリ押しで進められたという印象を残したことで、敵役のイメージがどうしてもつきまとうことになった。
果たして、敵役になることがわかっていて、養子になると手を挙げる人間がいるものだろうか。麻生副総裁などは、その点をまったく考えていなかったのではないだろうか。
女性天皇や女系天皇への道が開かれたからといって、皇族数が確保され、皇位の安定的な継承が保証されるわけではない。それは、養子案についても同様である。そこに妙案がないことが、この議論の難しいところである。
それでも、国民のあいだに「愛子天皇」待望論が高まりを見せてきたのは、それが日本社会を変えていく起爆剤になると考えるからである。
天皇制の危機を深める法改正
今回改正される皇室典範は、これまで以上に女性差別や身分差別を助長するものとなる。それは、現代にはまったくそぐわないものである。
現在の皇室では、愛子内親王を含めた女性皇族の活躍がめざましい。だからこそ、国民は皇室に好意を持ち、さらには、女性が活躍する社会がより大きく開かれていく可能性を見いだしている。
旧宮家は過去の遺物である。それは、国民全体にとってもそうだが、当事者にとっても同じだろう。あるとき、自分がそのような立場の人間であることを知って驚いた、と語る旧宮家の人たちもいる。
フェミニストの上野千鶴子氏などは、天皇制そのものが、女性差別、身分差別の根源だと『世界』誌で主張している。たしかにそうした面はあるものの、天皇が不在になれば、日本も共和制に移行し、大統領を選ばなければならなくなる。大統領という存在が、いかに難しく、むしろ社会の分断を煽ることになるのは、アメリカや韓国の事例が示している。
しかも、大統領となれば、国民全体の投票で選ばれるわけで、広く世の中に知られた著名人でなければ当選は難しい。それはこれまでの東京都知事選挙などを考えてみればいいだろう。
共和制に移行したからといって、女性差別や身分差別が一掃されるわけではない。むしろ、天皇や皇族と国民とが協力し合う形で作り上げてきた現代の「大衆天皇制」のほうが、社会の安定には大きく寄与している。
しかしながら、あえて共和制ということになれば、国民は初代の大統領に誰を選ぶだろうか。そのときは皇室が存在しないわけだから、「愛子さん」を選出するのではないだろうか。「愛子大統領」なら、天皇制から共和制への移行を容易にするだろう。しかも、それ以降の大統領のモデルになるはずである。
それも悪くないかもしれない。そんなことを考えさせてしまうほど、今回の改正審議は天皇や皇族の存立を危うくさせるものなのである。
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。