こんな養子縁組は前例がない
歴史上、親の代から皇族でない者が養子縁組によって皇族となり、皇統をつなぐ役割を期待された前例はこれまでない(宮内庁書陵部『皇室制度史料 皇族 三』)。
醍醐天皇の孫で源高明の娘だった明子は、盛明親王の養女として「女王」の身分を得ている。だが、藤原道長の側室になった事実から分かるように、皇統を継ぐ位置にいなかった。
鎌倉時代の忠房親王は、親の代からすでに皇族でなかった者が、後から親に紐づけられず、単独で皇族になった先例と誤解されることもあった。だが、もともと父親の彦仁王が皇族だった時に皇族として生まれていた。いったん皇籍を離れた後で、再び皇族にもどったのが実情だ(日本史史料研究会監修・赤坂恒明氏著『「王」と呼ばれた皇族』令和2年[2020年])。
どちらも旧宮家系男性が、婚姻も介さずに皇族になることを、正当化する根拠にならない。
高貴な気風は受け継げるのか
敬宮殿下はこれまで、天皇ご一家おそろいでの「令和流」のご公務や、単独でのご公務を重ねてこられた。そのたびに、国民の殿下への共感や期待は高まってきた。“愛子さまフィーバー”と呼ばれる熱狂的な奉迎も各地で見られる。
これは、「直系の長子」として本来、皇位を継承されるのにふさわしい方が、その誠実さとご献身によって、多くの国民から敬愛されている事実を示す。
しかし政府は、その敬宮殿下に皇位継承資格を認めようとしない。あべこべに、80年近くも民間で暮らしてきた家の孫世代の男子を、前代未聞の養子縁組で皇族にして、その子には皇位の継承資格まで認めようとしている。
本末転倒も極まる。
一夫一婦制なのに男系男子限定という、昭和の皇室典範から始まった「歴史と伝統」に無縁な欠陥ルールに固執して、直系/傍系の区別も、皇室/民間の区別もないがしろにする。そんな姿勢から、天皇ご一家が育まれている「感謝と思いやり」にあふれた高貴な気風を、次代の皇室に伝えることができるだろうか。
皇室に受け継がれる精神的な美質が失われてしまえば、「神武天皇以来の男系の血筋」なるものを振りかざしても、「国民統合の象徴」として人々から敬愛を集めることは至難だろう。
「1人だけが皇族」という家族の不自然
政府・与党は「女性天皇」「女系天皇」をたしかな根拠もないまま、極端に警戒している。それが理由で、内親王・女王殿下方の配偶者やお子さまは「国民」とする制度にこだわっている。
しかし、あまりにも不自然で無理なプランだ。
女性皇族の配偶者やお子さまが“国民”であれば、当然ながら憲法(第3章)によって保障されている政治活動の自由や宗教活動の自由、経済活動の自由、言論活動の自由などが、最大限に尊重されなければならない。しかし社会通念上、夫婦・親子は一体と見られがちだ。
そのため、配偶者やお子さまのさまざまな活動は、そのまま女性皇族ご自身とか、さらに皇室自体の活動に限りなく近いものとして、受け取られかねない。そうすると、憲法(第1章)が皇室に要請する非政治性、公正中立性などを大きく損なうおそれがある。