高市政権は、今国会中の皇室典範改正に意欲を見せている。主要2案の論点は「旧宮家の養子案」と「女性宮家創設の案」。皇室史に詳しい島田裕巳さんは「そのうち養子案については、日本国憲法の第14条に抵触する危険性がある。不思議なことに、そのことはほとんど議論されていない」という――。
春の園遊会に臨まれる愛子さま=2026年4月17日、東京・元赤坂の赤坂御苑(代表撮影)
写真提供=共同通信社
春の園遊会に臨まれる愛子さま=2026年4月17日、東京・元赤坂の赤坂御苑(代表撮影)

戦後社会をゆるがす重大な問題への導火線

国会では4月15日から、皇族の数を確保するための議論が始まっている。

ところが、そこに参加する中道改革連合は党内での見解をまとめきれていない。そこで、来月に開かれる協議までに、それを行うことを約束している。

しかし、それは果たされるのだろうか。報道でもその点についての議論が欠けているのだが、そこには戦後の日本社会の根底を揺るがしかねない重大な問題が関わってくるのである。今回はそのことについて触れたいと思うのだが、そもそも天皇や皇族のあり方というものは、問題をはらんでいる。

日本国憲法の第14条では、「すべて国民は、法の下に平等」であり、人種や信条、性別、社会的身分などによって差別されないと定められている。

では、天皇や皇族はどうなるのだろうか。

天皇については、憲法の第1条で、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」とされ、特別の地位が与えられている。これに対して、皇族になると、憲法ではその役割などについては言及されていない。

憲法のことになると、自衛隊の存在が明記されていないことが問題にされてきた。ところが、皇族についても、皇位継承以外は具体的に述べられていない。その点で、天皇以外の皇族の立場というものはひどく曖昧なのである。ただ、自衛隊もそうだが、皇族の存在はすっかり日本社会に定着している。

憲法第14条に抵触する「旧宮家の養子案」

現在の国会では、「旧宮家の養子案」と「女性宮家創設の案」とが議論の対象になっている。

中道改革連合において意見の集約ができないのも、党内において、女性宮家が創設されたとき、その配偶者や子どもを皇族とするのかどうかで意見が分かれているからである。

そこも一つの問題ではある。配偶者や子どもを皇族としなければ、一つの家に皇族と一般国民が同居することになってしまうからである。

それは家のあり方として奇妙だが、養子案については、今挙げた憲法の第14条に抵触する危険性がある。不思議なことに、そのことはほとんど議論されていないのである。

現在の憲法が、戦前の大日本帝国憲法を改正する形で公布されたのが1946年11月3日のことで、施行は翌年の5月3日だった。公布から今年の11月で80年になる。したがって、私たち国民はそうした憲法のあり方にすっかりなじんでいて、そこに特別な意味を感じなくなっている。

だが、ここで重要なのは、戦前の日本社会においては明確な身分上の差別が存在したことである。だからこそ、身分上の差別があってはならないと第14条で規定されている。もしそれがくつがえされたとしたら、それは大変なことになる。