子どもを産み育てる意義の変化

理事は続ける。

『少子化に打ち勝った保育園 熊本「やまなみこども園」で起きた奇跡』(新潮社)
石井 光太『少子化に打ち勝った保育園 熊本「やまなみこども園」で起きた奇跡』(新潮社)

「うちの園では、5歳児の8割が休日も習い事に通っています。定番のスイミングなどに加え、駆けっこや柔軟体操まで習い事で身につけさせようとする。これまで親子が公園で当たり前のように行っていたことが、お金を払って外部委託するものになっているのです。

そのため、親子のかかわりは年々希薄になっていて、親に絵本の読み聞かせをしてもらったことがないという園児は今や普通、最近では朝どころか休日でも家族がそろって食事をすることがなくなりつつあります。もちろん、それでも子どもは育つには育つのですが、家族のきずなというか、関係性が変わってきている印象があります」

今の保護者が多忙さから育児に関する労力を極力減らしたいと願う気持ちはわかる一方で、ベテラン保育士がそうした現代的な潮流に苦言を呈したくなる気持ちも理解できる。

どちらが良いか悪いかではなく、こうした傾向が極端に強まった社会において、若い人たちが子どもを産み育てることに意義を見出せなくなっているのではないか。

ライフイベントにおける出産や子育ての優先順位が下がれば、夫婦にいくら経済力があったとしても、出産は後回しにされるし、子どもの数も抑えた方が賢明という判断になる。

石井 光太(いしい・こうた)
ノンフィクション作家

1977年東京生まれ。作家。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなう。著書に『物乞う仏陀』(文春文庫)、『神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く』『遺体 震災、津波の果てに』(いずれも新潮文庫)など多数。2021年『こどもホスピスの奇跡』(新潮社)で新潮ドキュメント賞を受賞。