脳の記憶容量を増やす簡単な方法
高齢になると、同時並行で複数の料理を作ることが苦手になりがちですが、それはRAMの容量が小さくなる、あるいは作業机が小さくなる結果、複数の作業を同時に行うことが難しくなるからです」と川島教授。
2つ目のポイントについては、「できるだけ手早く作業することを意識しましょう。何時何分までに、あるいは何分以内に完成する、と目標に向かって最大限に頭の回転速度を上げると、脳を鍛えることができる、と研究で分かっています」と話す。
両方のポイントに気をつけながら行える家事の代表が、料理だ。家族が食卓につく時刻までに完成するよう作業の段取りを決めながら、手早く、同時並行で複数の料理を作る。こうした脳に負荷をかける行為で、特に効果が出やすいのが実は初心者だ。
「お仕事をリタイアされた方が、慣れない料理を一生懸命すれば、脳の健康に役立ちます。一方、家事のベテランは、初心者にとっては難しい同時並行の作業も、何も考えずに流れ作業でサッとやれてしまう。しかし、脳トレにするには考えることが必要です。その場合、新しいレシピへ挑戦すれば、改めて作り方を確認し考えることになるので、脳の記憶容量を増やすことにつながります」と川島教授は話す。
ミシンなどの縫い物も、完成品をイメージして材料を選び、作業するので脳トレになる。掃除も、時間を測って取り組むなど、効率的に行う工夫をするとよい。家事をあまりしてこなかった人こそ、一つひとつ学びながら実行する家事への挑戦が、脳を鍛えることへもつながりそうだ。
ネット検索よりもリアルで調べる方が学習効果が高い
新しいことへの挑戦は、好奇心も旺盛にする。「前向きな気持ちを持つ人や、いろいろなことに興味を持つ人は、認知症になりづらいことが分かっています。とはいえ、単に『前向きな気持ちになりなさい』と言われても応えにくい。新しいレシピ、やったことがない家事など、具体的に目標を立て挑戦するとよいと思います」
実は川島教授、もともと料理が好きでよく作っていた時期があるそうだ。自身の体験も踏まえ、「料理のセンスはビジネスセンスとまったく同じ、と感じています。くり返しになりますが、目標を達成するために、計画を立ててどう実行するか、という過程は料理でも研究でもビジネスでも同じです」と話す。
前回配信した親子で行う料理の話とも共通するが、誰かと家事について情報交換するといった、コミュニケーションも脳トレになる。調べものも脳を活性化するので、レシピを探すのは効果的だが、不思議なことに、インターネットでの検索についてはあまり効果が期待できない。
川島教授は、「理由はわかりませんが、私たちが測定した結果、パソコンやスマートフォンで読んでも、学習効果は明らかに低くなってしまうことが分かっています。一方、レシピ本を読むなど紙の本から情報を得る、知識がある人に聞く、などリアルな世界での少し面倒な方法の場合は、学習効果が高く、脳の健康に良いです」と注意する。
脳科学の基礎研究によって、文字を読む、数を扱うという2つの活動は、脳機能を非常に効率的に活性化させることが明らかになっている。