専門家の教育を受ける機会を
じゃあ、どうすればいいのか?
社員に専門家からの教育を受けるチャンスを与え、その後は女性の自分の判断に任せる。そして女性は、自分の仕事と妊娠適齢期の兼ね合いを自分で受け止め、戦略を練るということです。
人材育成には、男性と女性は「仕事に打ち込める時期」に差があり、それを多様性として受け止める柔軟性を備えた設計が必要になります。例えば、30歳と決まっている昇進試験をいつ受けても不利にならないようにする、そんな取り組みです。「産み時をいつに設定しても、仕事に不利にならない柔軟な人事」に変えていくしかないと思います。
男女の能力に差はありませんが、やはり妊娠だけは女性にしかできないことです。子育ては、育休をとった男性に言わせると「おっぱいを出すこと以外は女性と同じことができる」ので、男女差はないと思っています。でも10カ月お腹で赤ちゃんを育て、この世に生み出すという仕事は女性だけのものです。女性はしっかりと自分の人生を自分で運営していかなくてはいけません。
企業サイドからすると、産む女性は会社の利益にならない、お荷物ということになるのでしょうが、出産した女性社員は将来のお客様を育ててくれる存在と思えばいかがでしょう?
「うちはアジアに進出するから関係ない」と言われてしまえばそれまでですが、国内市場を相手にし、日本人の従業員を必要とする以上、次世代の再生産のコストをすべての会社が負担しなくてはいけません。もし会社の商品がラーメンや飲料だとすれば、その会社の女性社員が仕事のために産み時を逃してしまったら、将来の会社の売り上げも減るのです。
「木を育てず伐採するだけの会社に未来はない」のです。
データ提供:国立成育医療研究センター 齊藤英和医師(『妊活バイブル』より)
少子化ジャーナリスト、作家、白百合、東京女子大非常勤講師
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『婚活症候群』(ディスカヴァー携書)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書) など。