大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK)には秀吉の妻となる寧々(浜辺美波)の養父・浅野長勝(宮川一朗太)が登場する。系図研究者の菊地浩之さんは「寧々は身分の低い家に生まれたが、秀吉と結婚する前に武家・浅野家の養女となった」という――。

※本稿は、菊地浩之『増補新版 豊臣家臣団の系図』(角川新書)の一部を再編集したものです。

大河ドラマ「豊臣兄弟!」で秀吉の妻となる寧々を演じている浜辺美波。第36回東京国際映画祭参加時、2023年11月1日
写真提供=©Rodrigo Reyes Marin/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
大河ドラマ「豊臣兄弟!」で秀吉の妻となる寧々を演じている浜辺美波。第36回東京国際映画祭参加時、2023年11月1日

秀吉の正妻の実家、浅野家とは?

浅野家は秀吉の正室・北政所(於寧おね、寧、寧々ねね)の養家である。寧は杉原助左衛門(入道道松。定利。?〜1593)の娘として生まれたが、母方の伯父で織田家臣の弓衆・浅野又右衛門長勝(?〜1575)の養女となったのだ。

服部英雄氏は『河原ノ者・非人・秀吉』の中で「『祖父物語』『清須翁物語』に、ね(寧)の出た家(杉原)は連雀商人(編集部註:行商人)であったとある」と記している。

決して高い家柄ではなく、むしろ下層身分である。しかし、「秀吉と寧の結婚に際しては、寧の母親の賛同が得られなかった。

『秀吉公の卑賤を嫌ひたまひて、御婚姻をゆるし給はさりしに』(中略)

寧は、いったん織田家の弓大将であった浅野又右衛門と妻である実母妹(七曲)夫婦の養女になった。寧は養子縁組みで身分が上昇した。その女婿と釣り合いも取れぬ。秀吉の身分は周囲からかなり低くみられていた」という。

豊臣秀吉の正室・寧(高台院)の肖像画、17世紀(高台寺所蔵)
豊臣秀吉の正室・寧(高台院)の肖像画、17世紀(高台寺所蔵)(写真=CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

寧の実家・木下(杉原)家にしても養家の浅野家にしても、閨閥けいばつといえるような有力者は存在しない。秀吉が出世したから、その親族として大名に取り立てられた者ばかりである。

「一代でのし上がった秀吉には譜代といえる家臣は皆無だった。こうした場合、一族を頼るのが常套手段だが、秀吉の一族にはめぼしい人材がいなかった」(『織田信長の家臣団』)という、和田裕弘氏の手厳しい指摘は的を射ている。

秀吉の義兄となった浅野長政

浅野弾正少弼だんじょうしょうひつ長政(1547〜1611)は、通称を弥兵衛といい、天正16年に従五位下弾正少弼に叙任された。

いみなははじめ長吉。文禄元(1592)年頃に長政と改名したという(以下、長政に表記を統一する)。

素直に考えるなら、秀吉の義兄として信長から偏諱へんきをもらい、秀吉から一字もらって「長吉」と名乗ったのだろう(そう考えると、長政の養父の諱にたまたま「長」の字が付いているのは不自然で、長勝という名前も後世に創作したものと考えた方が良さそうだ)。

長政は尾張国丹羽郡宮後村(愛知県一宮市今伊勢町宮後)の安井弥兵衛重継の子に生まれ、織田家の足軽弓頭・浅野又右衛門長勝の婿養子となった。母は長勝の姉妹だったらしい。