20歳以降に増えた体重は「ほぼ内臓脂肪」

「昔は痩せていたのに、気がつけば体重が10キロ以上増えていた」という人は、意外にいるのではないでしょうか。

社会人になってから生活リズムの変化や運動不足、ストレス、外食の増加などで、20歳の頃と比べてじわじわと体重が増えていくのはよくあるケースです。

基礎代謝(生きているだけで消費するエネルギー)のピークは20代前半といわれているため、20歳の頃と食事量が変わらなければ加齢とともにどんどん太ります。しかし医学的に見ると、20歳からの体重増は慢性疾患のリスクが高まっているサインです。

どうして危ないのかというと、20歳以降に増えた体重は、ほぼ内臓脂肪だからです。先ほども話したように、基礎代謝が落ちる20歳以降は、使えなかったエネルギーは脂肪として蓄積されます。

日常より運動して筋肉をつけている人は別ですが、そうでなければ「この増加分は脂肪、しかも内臓脂肪」と考えて差し支えありません。BMIが正常範囲でも、この10年くらいで数値が上がってきている人は注意してください。内臓脂肪は、かくれ肥満の原因です。しかも、血糖値や血圧、脂質に悪影響を与えます。さらに、体重が増えた時期が早いほど慢性疾患のリスクは大きくなります。

30代で10キロ増えれば、その後の40代、50代を高血糖や高血圧の状態で過ごすことになり、長期にわたって血管や臓器に負担がかかるからです。結果的に心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気へとつながりやすくなるのです。

40~50代で体重を落とせれば、リスクは低下する

20歳の頃から増えた体重はほとんど内臓脂肪だと聞いて、焦った人もいるかもしれませんが、事実がわかったらやるべきことは体重を減らすことです。

坂本昌也『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』(あさ出版)
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特に生活習慣病のリスクが急激に高まる40~50代は、体重減の効果を最大限に得られるチャンス。ある研究によると、40~50代で体重を落とした人は、その後10年、20年にわたって心筋梗塞や脳梗塞、腎不全の発症リスクが明らかに低下することが示されています。

ただし、気をつけたいのが減らし方。体重を減らすときに大切なのは、急激な減量ではなく「持続可能な減量」です。一般的には半年~1年で現在の体重の最大3~5%を目標にするのがよく、例えば80キロなら4キロ、70キロなら3.5キロです。これだけでも血糖値や血圧、脂質がかなり改善し、薬を減らせることもあります。

急激に体重を落とすと、体が飢餓状態と勘違いしてリバウンドしやすくなりますし、筋肉まで落ちて基礎代謝が下がり、かえって太りやすい体質になります。頑張ってダイエットしても、生活習慣病を進行させる原因になるのです。

(参考文献)
令和4年度 健診検査値からみた加入者(40-74 歳)の健康状態に関する調査/健康保険組合連合会 政策部 調査分析グループ(令和6年6 月)
Oh HS, et al. Nature. 2023;624:164-172.
『Cardiovascular Diabetology』(2025 年8 月11 日号)
JAMA Netw Open: May 27, 2025, 2025;8;(5):e2511825.

坂本 昌也(さかもと・まさや)
国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長

国際医療福祉大学 医学部教授。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長。東京都出身。東京慈恵会医科大学医学部卒。東京大学・千葉大学大学院時代より、糖尿病、心臓病、特に高血圧に関する基礎から臨床研究に渡るまで多くの研究論文を発表。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医、日本内分泌学会認定指導医・内分泌代謝専門医、日本高血圧学会認定指導医・高血圧専門医、日本内科学会認定指導医・総合内科専門医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本医師会認定産業医、厚生労働省指定オンライン診療研修、臨床研究協議会プログラム責任者養成講習会を修了。現在も研究を続けながら若手医師や医学部生の指導も担当している。