理由①:出産期に女性が離職しなくなってきた

第一の理由は、正規雇用で働く女性が“辞めなくなってきた”ことです。

これまで日本では、第1子出産のタイミングで女性が離職するケースが多く、キャリアの継続が難しい状況が続いていました。しかし育児休業制度の普及や、両立支援策の浸透によって、この構造が大きく変わっています。

国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」によれば、①第1子出産後も働き続けている女性の割合は、2000〜04年の27.5%から、2015〜19年では69.5%へと倍増以上で推移し、②第1子を出産した女性全体のうち、育児休業制度を利用して継続就業したのは、2000〜04年の15.3%から、2015〜19年の42.6%へと約3倍となっています。

つまり、出産後も正社員として復帰し、キャリアを継続する女性が急増しているということです。

よく「非正規から正規へ転換する女性が増えたからでは?」という推測も出ますが、総務省「労働力調査」を見る限り、2011年以降に大きく増えているとは言いづらい状況です。依然として“非正規から正規への壁”は高く、今回の正規増加の主因は、「辞めなくなったこと」にあると考えるほうが自然です。

理由②:深刻な人手不足が、女性の正規雇用を押し上げた

第二の理由は、日本全体を覆う深刻な“人手不足”です。

2010年代以降、失業率は低下、有効求人倍率は上昇し、労働市場は売り手市場へとシフトしてきました。コロナ禍で一時的に緩んだものの、その影響はすでに解消され、企業は再び積極採用に転じています。

帝国データバンクの調査(2025年7月)では、正社員の人手不足を感じている企業は50.8%と、半数を超える企業が「人が足りない」と回答しています。

こうした状況では、企業が“女性を正社員として採用する”インセンティブが強まり、新卒・中途ともに、女性が正規雇用として働き続けやすい環境が広がっています。転職市場でも、正社員の求人が見つけやすくなっており、これが女性の正規雇用増加を強力に後押ししているのです。