13年前、時短勤務制度がない環境で復帰
岡野さんは、産休・育休を見据えた人員配置によって再び現場担当に異動になる。そして約10カ月の休暇を経て、同じ業務に復帰することになった。
とはいえ、営業への自信はまだ取り戻せておらず、初めての育児も不安だらけ。復帰に当たっては上司に時短勤務ができないかと相談したそうだが、同社の営業は基本的に直行直帰の「事業場外みなし労働制」。現在は営業職でも時短勤務が可能だが、当時は裁量の範囲で調整するしか選択肢がなかった。
上司に「悪いけど自分でうまくやってほしい」と言われたときは、絶望的な気持ちになったという。両立にも仕事にも自信が持てないままの、ダメもとでの再出発だった。
「妻に働かせてあげている優しい俺」感を出してくる
こうした状況の中、岡野さんはさらに高い壁にぶつかる。それは、夫の“悪意なき無理解”。そもそも夫には、結婚当初から「僕の収入でも成り立つから君は働かなくてもいい」と言われてきた。フルタイム共働きでの育児が始まると、この考え方からくる言動が両立へのハードルとなって立ちはだかった。
仕事を続けたければ続けてもいい、家事育児が大変なときは僕も手伝うよ──。本人は優しさのつもりでも、働きたい女性にとっては「そうじゃない感」しかない言葉。対等に働き、対等に分担したいという望みはかなわず、ケンカになることもたびたびだったという。
当時の夫の同僚には妻が専業主婦という人が多かったため、その影響もあったのかもしれない。岡野さんは「だからか、私は普通に働きたいだけなのに、ちょいちょい“妻に働かせてあげている優しい俺”感を出してくるんですよ」と苦笑する。