【ポイントその③】自らの足を使って動く

自分なりの好きなことや、やりたいことを見つけるためには、自らの足を使って行動することが大切である。

楠木新『定年後、その後』(プレジデント社)
楠木新『定年後、その後』(プレジデント社)

定年退職した元会社員の話を聞いていると、自らはハローワークや人材派遣会社などに足を運んだことはないのに、「再就職は無理だ」とか「起業なんてとんでもない」と頭から決めつけて何も行動しない人が少なくない。また、「雇用延長で働く社員に対して企業は施しを与えているという姿勢だ」と報酬や仕事に対して不満ばかり口にする人もいる。

たしかに、再就職や起業はスムースにいかないことも多いだろう。雇用延長の取り扱いに納得いかないことも理解できないわけではない。しかしそれらは、長く「寄らば大樹の陰」にいたからそう思うだけであって、頼るべきものがない人から見るとわがままに映る。

ハローワークに行って就職状況を知る、実際の働く現場を見学して感じたことを整理する、起業についてシミュレーションしてみる。これなら経費もいらない。冷やかしでもいいから初めの一歩を踏み出すことが大切だ。

たとえ就職が決まらなくても、起業が実現しなくても、現実がわかるだけでも勉強になって大きなプラスなのだ。たとえ三日坊主になっても、3日分は成長できるのである。

70歳を過ぎても「新しい自分」になれる

70歳を過ぎても、自分の足を使って次のステップに向かう人は大勢いる。

現役で働いている会社員の中には、やりたいことを見つける大切さは理解しても「しかしながら」という言葉を続けて、自分が動けない理屈や言い訳を上手に述べる人もいる。それもひとつの考え方であろうが、定年退職してやりたいことが見つからず悩んでいる人は少なくない。

また「とにかく忙しくて、そんなことを考えて行動できる余裕なんてありません」と述べる人も多い。しかし「もう一人の自分」や「新たな自分」を見つけ始めると、自然と自分で余裕を作っていけるというのが私の実感である。