子どもの頃に好きだったことにトライする

2つ目は、子どもの頃に好きだったことを再びやることだ。

たとえば、小さい頃からものづくりが好きだった人が、職人の世界に転身する例もあれば、定年後に小学校の放課後の工作教室で教えたり、便利屋の一員として高齢者の椅子や犬小屋を製作して喜ばれている例もある。

実家が農家だった会社員が、「収穫の喜びを再び味わいたい」と定年直前に実家に戻って農業に取り組むケースもある。小さい頃にテレビで観たアメリカの豊かな生活に憧れた人が、ニュージーランドに移住して牧場経営をしていた例もある。

子どもの頃に好きだったことを再びやってみると、同じことはできなくてもその人の中に物語が生まれる。だいたい小学生から中学生くらいまでに受けた刺激がポイントになっている例が多い。

また、一度途中であきらめたことを再びやってみるという手もある。大学の受験勉強に専念するためにバンドを解散した人が改めて音楽を始めてみる。就職という現実を前にして小説の執筆を断念した人がもう一度物書きにチャレンジするなどの例がある。

ガレージで音楽を演奏する年配の人々
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挫折や不遇な体験を活かす

3つ目は、挫折や不遇な体験を活かすことだ。

病気、自然災害、リストラ、家族の問題といった、一見すると不遇だと思えるような体験を通して、「新たな自分」を発見して次のステップに進む人がいる。もちろん、すぐに切り替えることはできないが、自分自身と向き合う中で一定の時間をかけて転身するのである。

阪神・淡路大震災(1995年)を機に会社を辞め、被災地域の活動のリーダーとして活躍している人がいる。また、会社員から転身した人の中には、病気を経験したことを語る人が少なくない。

そこでは「好きなことだから」という理由ではなくて、「せっかく生まれてきたのだから」という言葉を胸に秘めて次のステップに進むのである。

「ポイント①」として紹介した3つは、一見したところバラバラに思えるが、「真剣に自分自身と向き合っている」という共通性がある。また、この3つをよく見ると、「新たな自分」は、遠い未来にではなく、自らの足元にあるということにも気づくだろう。