「新たな自分」を発見する

現役時代の「会社員の自分」とは違う、「もう一人の自分」「新たな自分」を発見するには、具体的にどうすればいいのだろうか。

この20年間の取材で得た多くの事例を整理してみると、おおむね3つのポイントが見えてくる。以下、それぞれについて簡単に説明していきたい。

ただし、これらの事例は、「現役時代」「定年後」「定年後、その後」といった時間軸をまたいでいることに留意してほしい。

【ポイントその①】過去の経験から抜き出す

どんな過去の経験から抜き出すのか。1つ目は、仕事の延長線上から見出すことだ。

30~40年間働いてきた仕事で得た技術や、培ってきたスキルを社会に向けて役立つように変化させる。組織の中で取り組んだ科学技術的な知識をもとに、社外や社会に対して発信するコンサルタントとして活躍するとか、保険会社で高い営業スキルを持つ人が保険の代理店として独立するケースもある。

保険の営業で実績を上げていた人で、60歳の定年後、オフィスの事務機を販売する取引先の社長から「若手営業マンを指導してほしい」と頼まれて、営業の現場を若手社員に同行して回るようになった人がいる。本人も営業が好きなので、嬉々としてその仕事をやっている。

大きな会社では当たり前のことが、働く場所を変えると役立つようになる例は多い。現役の時は、どの部署で働くかは会社が決める。しかし定年後以降は、「自分をどこに持っていけば役立つか」をぎ取るセンスが求められる。それが、「もう一人の自分」や「新たな自分」を発見するのに役立つのである。