四六時中スマホばかり見ていることで、ぐっすり眠れないという人が増えている。医師で脳生理学者の有田秀穂氏は「現代人は心地よい眠りへと導いてくれる脳内物質『メラトニン』の分泌が減っていることが問題だ。しかし、就寝前2時間の工夫をすればメラトニンは増やせる」という――。

※本稿は、有田秀穂『スマホ中毒からの心のモヤモヤをなくす小さな習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

ベッドで、枕もちゃんと使ってすやすや眠る犬
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人間は「夜」に寝るようにできている

いうまでもなく、地球上のすべての生き物は、睡眠と覚醒の周期的な変動を繰り返すことで、生命の営みを途切れることなく継続してきました。

脳も心も体も、太陽の出ている昼間に活発に活動し、太陽が沈んでいる夜に、睡眠して休息しエネルギーを補給します。

その仕組みは、頭のてっぺんから足の先まで、60兆個ある細胞すべてにあります。各細胞の遺伝子に「時計遺伝子」が備わっているのです。

ただし、60兆ある細胞がバラバラに24時間のリズムを刻むのではありません。

それぞれが同期して活動するように、脳の視床下部に「主時計」がきちんとあって、その時刻信号が、神経やホルモンを介して全身の細胞に送られ、同期してバイオリズムを刻むように、出来上がっているのです。

この「主時計」は、自分の意思で勝手に修正することができません。

無意識のうちに繰り広げられる「自律機能」なので、大脳皮質によるコントロールは利かないのです。

ですから、人間が勝手に昼夜逆転の生活を継続していると、やがて体のあちこちに不調が現れて、病につながってしまうのです。

心地よい眠りに導く体内睡眠薬「メラトニン」

睡眠について、現在知られている医学的知識を整理しておくことにします。

私たち人間は、自前の〝睡眠薬〟を夕方になると合成し、睡眠の導入と維持に活用しています。その睡眠薬の名前が「メラトニン」です。

メラトニンは脳のほぼ真ん中に位置する松果体で合成・分泌されます。

その合成は、視床下部の「主時計」の指令を受けて制御されています。

「主時計」と松果体は神経でつながっていて、その一方で「主時計」は網膜と神経でつながって、網膜に太陽光が当たっている昼間には、メラトニンの合成ができないように抑制がかけられているのです。

したがって、夕方、太陽が沈むとその抑制が外れて、松果体でメラトニン合成が始まります。

つまり、日没とともにメラトニン合成が始まり、日の出とともに合成が止まるというわけです。完全に太陽光で制御されているのです。

大事な点は、「太陽が出ている昼間にはメラトニンは作られない」ということです。「カーテンを閉めて部屋を暗くすれば?」という疑問もありそうですが、メラトニンに関しては、これは無意味です。