8月11日~15日、中華人民共和国雲南省昆明の雲南大学で「第11回国際直翅目学会(11th International Congress of Orthopterology)、通称「国際バッタ学会」が開催された。世界26カ国、約300人が参加。我らがバッタ博士・前野ウルド浩太郎はモーリタニアより飛来参戦。合計4本もの発表を行った。(インタビュー・構成=プレジデントオンライン編集部)

博士は今日もやらかした

国際バッタ学会の懇親会会場にて。日本、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ベルギーの研究者たちと。(写真提供=前野ウルド浩太郎)
――一度の学会で1人で4本発表するというのは、とんでもなく多い部類に入るのですか。

前野「とんでもなく多い人です。急に話すことになったものが多かったので、自分、大パニックでした」

以下が、今回博士が発表した4本だ。

[1]誘致プレゼンテーション

次回(2016年)の国際バッタ学会をモーリタニアで! というアピールとロビー活動。今回参加できなかったババ所長の代打。

前野「国際バッタ学会は毎回大陸を変えて開催されます。前回、トルコで開かれたときもモーリタニアは立候補したんですが、中国に敗れました。今回のライバルはブラジルです。ほとんどオリンピックです。これから1年かけて開催地を決めていくことになります」

[2]フロリダのドクバッタ野外調査発表

アリゾナ砂漠でバッタ研究をしていた文通相手のホイットマン教授(イリノイ大学。国際バッタ学会の編集長)と2カ月前にやったRomalea microptera(通称・ドクバッタ)共同野外調査の発表。

前野「壇上には自分だけです。最初は自分、発表の予定がなかったんですが、ホイットマン教授が『コータロー、あれ、発表してよ』と。ただ、いつか使おうと思って、いっぱい写真やビデオは撮ってあったので、それをつなぎ合わせて、なんとか」

[3]バッタと宗教と文化

本来ババ所長が発表するはずだったもの。スライドは所長が用意したが、代打・バッタ博士はバッタの群れが登場する日本のマンガを紹介するという技をやらかす。石渡治『B.B』、船戸与一原作、柳澤一明画『山猫の夏』、酒見賢一原作、森秀樹画の『墨攻』……。紀元前3世紀の中国戦国時代を舞台とする『墨攻』では、人為的に飛蝗群をつくり、生物兵器として使う陰謀が描かれる。ええっ、そんなこと考えたことなかったよ……とどよめく会場を埋める世界のバッタ学者たち。次の瞬間スクリーンに映る、ぎっしりと描かれた大量のバッタ飼育箱。博士はここで叫ぶ。

「『ウエポン!』」

ここで場内は大爆笑になったという。よかったよかった。

[4]サバクトビバッタの飢餓耐性に関する研究

前野「昨年6~9月、フランスCIRAD(農業開発国際研究協力センター)に留学したときに手掛けたもので、自分が昔から続けてきたテーマの一つ『エサがないときに、サバクトビバッタはどうしているのか』という研究です。これが自分の本業です。サバクトビバッタの研究者として名前を売りたいので、これはなんぼ忙しくてもやらなきゃいけないだろう、と意地でやりました」