問題解決のための不良の原因探求に関しては、積極的不良のほうが厄介である。コンポーネントに分解して不良の原因を分析的に探求できる消極的不良と違って、積極的不良は分解が難しいからである。
今回の787の欠陥問題は、新しい蓄電システムがもたらした積極的不良である可能性が高い。だから解決に時間がかかりそうだとみられているのだろう。あるコンポーネントだけを取り上げて消極的不良がないということがわかっても、それが不良と無関係だとは言い切れないのである。システムとしての作動の解析が必要である。システム化された製品の場合には、新技術の導入に伴って積極的不良が起こる可能性は否定できない。その原因追求は厄介であることが多い。原因分析のためには、どのような条件の下でどのような使われ方をしたときに問題が発生するのかを調べていかなければならないからである。そのためには最終顧客の協力が不可欠である。顧客の了解を得て、使用状況を継続的にモニターし、データを集める必要がある。実際にジェットエンジンでは、そのシステムがつくられており、それがジェットエンジンメーカーの収益源になっている。積極的不良の原因追求は工場の中だけでは完結しない。これは、工場の中で完結することの多い消極的不良との大きな違いである。
ユーザーの使用現場と直結した品質管理のシステムを構築できれば、積極的不良の原因追求はより容易になるだろう。日本の建設機械メーカーは、このようなモニタリング・システムをつくり出している。現在の段階では、モニタリング・システムは、顧客の数が限られている産業材が中心だが、いずれ消費者をも巻き込んだモニタリング・システムがつくられるかもしれない。そうなって積極的不良の原因追求が行いやすくなると、新しい技術の取り込みもよりやりやすくなるはずである。日本の企業がこのレベルにまで進化することを祈っている。