相手のことをどれだけ知っているかも重要

左上の「第1フレーム」には「○○さんとは?」と書かれています。ここには、あなたがよく伝える機会がある相手の名前を書いてください。上司や部下・後輩、あるいはパートナーやお子さんでも構いません。その後、青ペンでその人の趣味や興味関心、好きなことやハマっている題材について書き出してみてほしいのです。

この「紙1枚」に関しては赤ペンプロセスはなしでも構わないのですが、最大のポイントは「そもそもどれくらい書けるか?」という点になります。たくさん埋められるのであれば、それだけ相手の「既知」を把握できていることになるので、「既知との照合」につながる伝え方もやりやすくなるはずです。

一方、もし青ペンプロセスでほとんど書き出せなかった場合は……。

今後の取り組みとして、まずは、この「紙1枚」に書けることを増やしていきましょう。

相手の言動を日々観察し、相手の話の内容にも興味関心をもつことで、何か発見があるたびに追加で埋めていってほしいのです。

そういう意味では、これは数分間で1回書いておしまいにするのではなく、何日も、何カ月もかけて少しずつ埋めていってもらうタイプの「紙1枚」になります。

子供のことは何でもわかっているつもりだったが…

実際、お子さんの名前を書いてこの「紙1枚」をやってくれた人が以前いたのですが、半分くらいのフレームしか記入できず愕然としていました。

聞けばここ数年はめっきりキャリア優先で、学童・習い事・塾・シッター等を駆使して子育ての多くをアウトソーシングしていたそうです。本人はそのことを「時代に合わせてうまいことやれている」と思っていたそうですが、この「紙1枚」を通じて「目が醒めました、子供との関わりを見直します」とおっしゃっていました。

このように、人によっては人生レベルのインパクトになり得る思考整理の機会です。カンタンだからといって雑に扱わず、丁寧にやってほしいと思います。

加えてもう1つ、「1枚」フレームワークは「他者にもっと関心をもちましょう」といった、ともすると精神論レベルのアドバイスについても、手を動かして行動に移せるレベルで活用できる。そんな手法だということも、改めて感じ取ってもらえたら嬉しいです。

伝える前に、どれだけ「相手の既知」を把握できるか。「既知との照合」の成否は、ここでほぼ決まってしまいます。

なので、まずは「この人とのコミュニケーションだけは何とかしたい」という人を一人選んで、実際にこの「紙1枚」を書いてみてください。そして、少しずつ青ペンで書けることを充実させていってください。良い転機となれば幸いです。