4時間続いた会見も中身がなく、タレント価値を損なった

さらなる事実認定をどう行うか、ガバナンスをどう変えるか、被害者にどう補償していくか、など本来語られるべき話ではなく、中身のない回答の羅列が続いた。その結果起きたのは、まるでこの2人まで中身がないように映ってしまったことだ。結局、ジャニーズが売ってきたものとは何だったのだろう。それは、こんな上っ面なものだったのだろうか。時間がたつうち、そんなことまで連想させられることになった。

つまりこの会見がもたらしたのは、タレントの価値の毀損きそんだ。タレントこそ、ジャニーズ事務所の一番のアセットのはずだった。ジャニーズの新しい顔として登場した2人に、こんな無理な役割を無理な設定で演じさせてよかったのだろうか。

いくら演じようとも、東山氏に経営の経験はなく、ガバナンスやコンプライアンスの知識も不足していることは明らかだった。これはドラマの起用ではないのだ。

写真=時事通信フォト
記者会見するジャニーズ事務所の東山紀之氏=2023年9月7日、東京都千代田区

再出発するジャニーズ事務所にとって、より深刻だったのは、この会見で東山氏自身の性加害疑惑が焦点になったことだ。早速BBCをはじめ、世界中でこの疑惑が報じられた。

前例のない数の児童性虐待を、元社長が重ねていたことで起きた交代劇。新社長が、その企業体質やカルチャーを改革するだけの資質があるか、問われるのは当然だろう。

東山新社長に性加害疑惑があることをかえって知らしめた

ただ、東山氏に性加害疑惑があることを、これまで知らなかった人も多かっただろう。新社長として会見に出なければ、ここまで追及されて国際ニュースになることはなかったはずだ。タレントとしての東山氏は、海外ではあまり知られていない。このため東山氏個人というよりジャニーズタレント全体が、性加害疑惑とも結びついてしまった。国内向けにとどまらず、海外向けのタレントの価値まで毀損したのである。

事務所やジュリー氏がこのリスクを意識していたかどうかはわからないが、彼らにとってそれよりはるかに重要だったのは、旧経営陣を表から隠すことだったのは確かだ。そしてそのためにタレントを矢面に立てることを躊躇しなかった。そこに彼らのタレントに対する考え方が透けて見える。

性加害疑惑のある東山氏を社長にしたこと自体、適切でなかったという見方もある。だがそもそも東山氏は、ジャニー喜多川氏の性加害の被害者となっていた可能性のある立場だ。性被害者だった可能性のあるグループの中から選んで、性加害者の責任を取らせるのは、筋が通らない。