本来、生徒が主体的に活用するもの
実は教育データ利活用ロードマップは、個人情報については、児童生徒・学習者がオーナーシップを発揮し、活用することを前提としている(匿名化されたビッグデータの取り扱いの難しさについては後述する)。だからこそ学習履歴が生かされる場合と、そうではなく消去し活用しない権利も含め、個人のオーナーシップを学習し発揮できる環境整備が前提になる。
また教育データ利活用に際してはスモールスタートが強調されている。
ただし、子供・学習者の「ウェルビーイング(幸せ)」のために教育データ利活用が可能になるとしても、その美名のもと規律なき個人情報の利用がされることはあってはならない。
信頼を得るためにクリアすべき課題
教育データ利活用が、国民・住民や児童生徒・保護者などの警戒感・不信感を乗り越え信頼を得て運用されていくためには、以下のような課題をクリアしていく必要がある。
まず前提として、児童生徒や学習者個人のデータのうち、同意なしには収集・提供されるべきでないものを明確し、その対象データについては保護者・児童生徒への説明と同意を得るルールを徹底すべきである。たとえば現在も学校での児童生徒の写真撮影やその利活用ルールは保護者の同意を得て行われている。
また日本の学校の教授学習指導の中で活用されてきた児童生徒の制作物等や法令で収集が必要な場合も、保護者・児童生徒等からもし質問等あった場合に学校がその必要性を説明しなくてはならない場合も出てくるだろう。こうした学校運営等のために必要なデータ収集については、文科省はじめ関係省庁が、現場での説明に使いやすい情報をホームぺージで公開することも必要かもしれない。
すでにGIGAスクール政策による児童生徒1人1台端末で、学習履歴やWeb閲覧時間などのデータは収集され蓄積されている。しかしどのデータを誰が蓄積し、卒業とともに消去されるのか、それとも匿名データを自治体・教育委員会や事業者が活用するのか、説明できる教員は学校現場にはいないし、保護者も知らされていない。
すでに教育データ収集が走り出している現実に対し、法制やルールの整備が追い付いていないのが実態なのだ。