動いてしゃべれる美少女アンドロイドを開発

――しかし、ラブドールは「作ろう」と思って作れるものなんですか?

【楊】中国にはロウ人形作りの技術の蓄積がありますから、顔の造形はこちらの技術を応用しました。顔にはめちゃくちゃこだわっていて、毎回、新作ごとに試作品を数十個は作ります。僕の理想の美女や美少女じゃないとイヤなので(笑)。

――ボディはどうでしょうか。日本のラブドールは、金属で骨を作って、型に入れてシリコンを流し込んで、鯛焼きのように製造しているようです。しかし、人肌のような質感を出すシリコンの組成や、気泡取り、接合部のバリ修正など、細かい技術が必要になります。

【楊】日本のラブドールメーカー「アルテトキオ」に協力を仰ぎました。指導をしてくださった同社の技術者は、弊社にとっては師匠とも呼ぶべき存在です。現在でもよくご意見をうかがっています。

一方で、骨格は金属加工ですから、中国には膨大なノウハウがあります。弊社の最高級製品と日本のオリエント工業の製品を比較すると、シリコンの質や顔の造形はまだ追いつけていないと思いますが、骨格についてはすでに勝っていると思っています。

――ベンチャーキャピタルから1000万元規模の投資を得たとうかがいました。中国のラブドール市場には大きな成長期待があるということでしょうか。

【楊】それはあると思います。さらに、私にはしゃべって動く美少女のアンドロイドを作りたいという夢があるんです。いま会話ができるAIや、可動するドールの研究開発を進めています。投資の獲得はこの点も評価していただけた結果だと思いますし、そもそも上場したのも、アンドロイドを開発するためにさらに資金を集めたかったからなんです。

いまからラボにご案内しましょう。こちらが、まだリモコン操作ですが上半身を動かせるドールと、表情を動かせるヘッドです。

<上>上半身可動ドール(中央)と、表情が動くドールのヘッド(右)。ともに試作品。<左下>表情が変わるドールの頭部。まぶたや眼球、口などが動く。動きはまだぎこちない。<右下>ラボにはドールの骨格が置かれていた。

――(ラボを見て)ちょっと怖いですが、表情がヌルヌル動いてリアルですね。これってセクサロイド(性的用途のアンドロイド)として売り出すんですか?

【楊】いや、最初は一般向けの市場開拓を考えています。日本の街にも、よく新装開店の店舗やネットカフェの看板を持って立っている人がいるじゃないですか。この子たちはまだ歩けませんが、上半身や表情はご覧の通りよく動く。そして、なによりかわいい(笑)。文字通りの「看板娘」として売り出せると思っています。店舗の前に立たせたりするのもいいでしょうね。

同時に開発しているのが、おしゃべりAIを搭載したドールです。「宝貝(バオベイ)、ニイハオ」と話しかけると受け答えをしてくれます。簡単な受付業務や、幼児や高齢者の話し相手にはなると思います。

――(話しかけてから)すごいですね。私の勤務先(多摩大学)にソフトバンクの「ペッパー」があるのですが、感覚としては同じか、それより賢いかもしれません。中国語は日本語よりも言い回しが断定的になるので、指示を明確に出しやすいという側面もありそうですね。

【楊】ペッパーのAIは優秀ですよ。追いつきたいものです。ただ、ペッパーよりもさらに人間的なものを開発するのがコンセプトです。弊社はAI開発の総指揮者として中国ロボット協会副会長の李博陽博士(東北財経大学副教授、35歳)を招聘しました。