かかりつけ医と大病院を使い分ける

このような出費を抑えるために、時間外特別料金と同様、かかりつけ医を持つことが有効です。普段は身近なかかりつけ医のもとで健康管理や疾患のコントロールを行い、高度な検査や治療を受ける必要があれば、紹介状を書いてもらって大病院を受診し、大病院での治療が終われば逆紹介でかかりつけ医に戻ってくるのが上手な医療のかかり方といえます。

紹介状の有無が医療費負担を左右することがお分かりいただけたと思いますが、「紹介状って何?」と疑問に思った方もいるかもしれません。紹介状というのは患者を他の医療機関に紹介する際に医師が作成する書類で、「診療情報提供書」と言います。保険診療の対象で250点の診療報酬が算定されますので、3割負担だと750円です(1点10円)。

主に次のようなことが記載されています。

・傷病名
・紹介目的(検査や入院、手術など)
・既往歴及び家族歴(アレルギー歴や患者の背景など)
・症状経過及び検査結果
・治療経過
・現在の処方
など

紹介患者の情報を紹介先の医療機関に提供することでスムーズな診療につなげることができ、時間と費用の節約にもなります。

「リフィル処方箋」で年2万円以上節約

受け入れ先の医療機関からすれば、飛び込みでやってきた患者と違い、あらかじめ情報が得られるため病状を迅速に把握できますし、かかりつけ医で行った検査を重複して行う必要がありません。また、大病院での検査や治療が終了した後は、その結果を記した診療情報提供書を作成し、かかりつけ医に逆紹介を行います。

このような役割分担を行うことは患者にとっても、迅速に必要な検査や治療につながり、身体への負荷や費用を抑えることにもなります。

今回取り上げなかった医療費節約術には、お薬だけのために受診する人はリフィル処方せんを利用するというものがあります。詳しくは〈知らないと大損…医療費を2万円以上節約できる「新しい病院のかかり方、薬のもらい方」〉に書きました。年間2万円以上の節約につながる可能性がありますので、ぜひ参考になさってください。

医療費の出費が増えてしまう人のNG行動を(1)(2)(3)と見てきましたが、(2)と(3)は保険外の特別料金なので、どんなに高額でも高額療養費の対象にはなりません。また、(1)(2)(3)すべて外来での出費なので、医療保険の対象にもなりません。

医療は多岐にわたり、医療費のかかり方も千差万別です。医療保険に入りさえすれば大丈夫というものではありません。ベースとなるのは何にでも使える貯蓄であり、現在の医療提供体制に関する正しい情報を知っておくことが、いざというときの保険になります。

内藤 眞弓(ないとう・まゆみ)
行政書士・ファイナンシャルプランナー

1956年香川県生まれ。大手生命保険会社勤務の後、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。1996年から約5年間、公的機関において一般生活者対象のマネー相談を担当。現在は、金融機関に属さない独立系FP会社である生活設計塾クルーの創立メンバーとして、一人一人の暮らしに根差したマネープラン、保障設計等の相談業務に携わる。共働き夫婦からの相談も多く、個々の家庭の考え方や事情に合わせた親身な家計アドバイスが好評。著書に『医療保険は入ってはいけない!』(ダイヤモンド社)など。講演・セミナー等の講師としても活動。内藤眞弓行政書士オフィスの代表でもある。