“リスクを考えずに買い物できる”仕組み

ユニクロが主に提供するのは、人から注目を浴びるような斬新さではありません。こうした商品提供の考え方は、世の中にかなり浸透してきました。これはまた、お客さん側のニーズにも合っています。多くの人が、ユニクロに「ベーシックと安定」を求めているのです。

いつ行っても同じ商品が置いてある安心感、誰が着ても様になる定番のデザイン、そして買い物の失敗を最小限に抑えられる価格設定……。これらはすべて、後悔を回避したいという顧客心理を理解したうえでのビジネス戦略なのです。

シンガポールのチャンギ空港にあるユニクロ
写真=iStock.com/tang90246
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ユニクロは、お客さんが将来後悔する要素をなるべく減らしてくれているわけです。私たちがリスクを考えずに買い物ができるようにしてくれている、と言うこともできます。別の見方をすればユニクロは、人間の消費行動における「買いたい」という欲求だけでなく、「買うことでの失敗を避けたい」という心理的ハードルまで理解して戦略づくりをしていると考えられます。ここには、誰でも真似できるポイントがありそうです。

新しいことにトライできない、やりたいことができない、変わらないといけないのに変われない……。そんな声をよく聞きます。今は変化の速い時代です。仕事でも、昨日までの成功法則が、明日には通用しないかもしれません。そんなときに「後悔の回避」は障壁になる可能性があります。

「不安」や「リスク」を分解して言語化する

では、私たちはどうすれば「後悔の回避」を取り除けるのでしょうか。そして、どうすれば新しいチャレンジの一歩を踏み出せるのでしょうか。まずは、自分の判断も他人の判断も「後悔の回避」の影響を受けていると認識することです。そのうえで、私がおすすめしたいのが、後悔のもとになる「不安」や「リスク」を徹底的に分解し、それを言語化すること。

「後悔の回避」が起きるのは、後悔を生むかもしれないと思っている「不安」や「リスク」があるからです。でも、この不安やリスクは、たいていの場合は解像度が低く、ぼんやりとした状態で存在しています。大きな、漠然とした不安やリスクだと、どう対策したらいいかわかりません。

そこで、この「不安」や「リスク」をどんどん細かく分解していき、「小さな不安」や「小さなリスク」にしていきます。そうすることで、「対策」があることに気がつきます。小さな不安やリスクならば、対策を具体化できるのです。