1日20〜30分、ウォーキングを毎日続けると出る利尿ホルモン
【2】「運動」とナトリウム利尿ペプチド
ナトリウム利尿ペプチドは、1984年、宮崎医科大学(現在宮崎大学医学部)の松尾壽之・寒川賢治によって発見された心臓から分泌されるホルモンで、血管を広げ、腎臓に働いて、余計な水分や塩分を排泄することで血圧を下げます。
ナトリウム利尿ペプチドは、全身から心臓に還ってくる血液の量が多くなったり、心拍数が増加するとその分泌が増えます。お風呂に入った後、排尿したくなります。これは、体を湯船に浸しておくと水圧が足にかかり、足に溜まった血液がたくさん心臓に還ってくることで、ナトリウム利尿ペプチドが分泌されるようになるからです。
わたしたちがナトリウム利尿ペプチドの作用が増強された遺伝子改変マウスを作ってみると、脂肪組織や筋肉などのミトコンドリアの数が増え、脂肪が燃焼しやすくなり太りにくく、そして、持久力が維持されました。
ナトリウム利尿ペプチドは、血圧を上げる作用のあるアンジオテンシンの作用を抑制します。わたしたちは、アンジオテンシンによって作られたエピゲノム変化、老化負債がナトリウム利尿ペプチドの投与で、消去されることを明らかにしました。
ナトリウム利尿ペプチドは、適度な運動で分泌が増えます。ウォーキングなどの運動は1日20〜30分ほど、隣の人と話ができるぐらいのきつさで毎日続けるのがいいといわれています。1日のうち一度にまとめて歩く必要はなく、分割して運動しても大丈夫です。歩くことが推奨されていますが、両足が一瞬でも地面から離れるような運動、ジョギングはさらにいい動きになります。少し脈拍が上がる程度の運動を目指してください。
また、毎日運動できない人は、週末に、ややきつめの運動をする、たとえば週末に登山やハイキングで5〜6時間歩くとか、週2回スイミングに行くことなどでもミトコンドリアは強化されます。

「愛情ホルモン」オキシトシンは心の安定をもたらす
【3】「ふれあい」とオキシトシン
ここ最近「オキシトシン」というホルモンが、「愛情ホルモン」として注目を浴びています。オキシトシンは、脳の中で視床下部の「室傍核」といわれる神経で作られますが、「下垂体」といわれる場所に運ばれて血液に溶けて全身に回っていきます。
わたしが医学部学生の頃は、オキシトシンは分娩時に子宮を収縮させ、乳腺を刺激して乳汁分泌を促すと習いました。しかし、オキシトシンは男性でもありますし、妊娠分娩以外の時にも、生涯にわたって分泌されています。最近の研究から、オキシトシンは子宮に作用するだけでなく、脳にも働くということがわかってきました。
女性の場合、妊娠分娩を通じて大量のオキシトシンが分泌されます。その結果、オキシトシンが、自分が産んだ子どもを何物にも代えがたく「愛おしい」と感じるように仕向けます。さらに、子どもに対してだけでなく、性別にかかわらず自分が見つけた「パートナー」を愛おしく思う気持ちを与えます。
