体に溜まった「老化負債」返済の鍵となる「ホルモン三銃士」

遺伝子のエピゲノム変化を抑制し、ミトコンドリアを元気にする老化負債返済の心強い味方になってくれるホルモン三銃士を紹介します。

【1】「食」とグレリン

グレリンは、食に関わる胃から分泌されるホルモンです。グレリンは、1999年、国立循環器病センターの児島こじま将康まさやす寒川かんがわ賢治けんじによって発見されました。

わたしたちが空腹になった時に、胃がその状態を感じ取ってたくさんグレリンを分泌します。分泌されたグレリンは、胃の周りにある、脳へ直通する神経に働きかけて「早く食べろ」と脳に命令します。また、われわれの成長と成人の体の維持に大切な「成長ホルモン」の分泌を増やせと命令します。つまり、グレリンはお腹が減ると分泌されて、しっかり食べて丈夫な体を作り、そして生きるためのエネルギーをたくさん作り出すことを促します。

わたしたちが年老いたマウスにグレリンを投与したところ、筋肉のミトコンドリアの機能が回復して、持久力の低下が防げました。また、腎臓が弱ったマウスにグレリンを与えたところ、減少した腎臓のミトコンドリアの数が増えて、タンパク尿が減って腎機能が回復することを見つけ出しました。

空腹を14時間確保すると、お役立ちホルモン・グレリンが分泌

実際にグレリンは人間に投与すると、いろいろな病気に効果を示すことが報告されています。がんで痩せてしまった人、心不全、呼吸不全、糖尿病性神経障害などを回復させることが示されました。

グレリンの分泌を高めるには、「お腹がすいた」と思える時間を持つことです。老化負債返済のためには、空腹の時間を少なくとも12時間、できれば14時間確保することが勧められます。1日2食であれば、比較的空腹の時間を取りやすく、3食食べる場合でも、朝7時と昼12時頃、そして夕17時頃に食事をして、その後は水分以外口にしないということでなんとか確保できるのではないでしょうか。

朝食を食べる若い女性の手
写真=iStock.com/west
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