アイスランドの10代が学校で学んでいること
担当している男性教師、ソルドゥル・クリスティンソン氏は、その狙いをこう話してくれた。
「アイスランドでも性暴力被害の70%は10代。北欧諸国では10代からネット番組などでポルノの消費が多く、特にレイプのような暴力的な性行為を見て影響も受けやすい。最近では裸の写真を送らせるデジタル上の性暴力も増えている。だから早くから、性的であることと暴力的であることは違うことや、性行為に関して合意を得るためのプロセスを教えているのです」

中でも、驚いたのが、「toxic masculinity(有害な男性らしさ)」についてまで教えているということだった。「男らしくあるべき」といった固定観念が、時に性差別的な言動に結びついてしまうことまで15歳の子どもたちに伝えているのだ。
「男性が全て加害者になるわけではない。平等を実現するために男性はどう行動すべきなのかということを、子どもたちの間でも話し合ってもらううちに、子どもたちの間で平等とは何か、という議論にまで発展していきます」
わが子を「被害者」「加害者」にしたくない
先の上谷さんはインタビューの中でこう話している。
「相手に嫌な思いをさせたい人も、訴えられるリスクを負いたい人もそうはいないと思うんです。それなのにアダルトビデオ(AV)などが正しいと思い込んでいて、嫌がっているのに『恥ずかしがっているからぐいぐい押してあげないと』と勘違いしてしまう」
そして、AVに頼らないためにも、同意とは何か正しく理解するための教育が必要だという。
アイスランドの学校で、「有害な男性らしさ」などを教えて、男子生徒の親からクレームなど来ませんか? と聞いてみたら、こう返答が返ってきた。
「全く。どの親も自分の子どもを被害者にも加害者にもしたくないと思うので」
今必要なのはこの発想ではないか。できるだけ早いうちから男女ともに平等とは何かから考え、議論する。性行為に関してもタブーなく。だが、日本の学校ではまともな性教育すらできないのが現実だ。
「性的同意」の本質的な理解までには、かなりハードルがある。