「法隆寺は地震に強い」から学べること

耐震が難しいのは、その建物が地震に耐えられるかどうかの答え合わせが数十年、あるいは数百年に一度しかできないことです。また、建物ごとに条件がまったく違うので、答え合わせ自体が難しい。

そのため、大地震が起こるまでは間違った情報を流し続けてもばれませんし、仮に起こってもばれない可能性が高いのです。なんともウソがまかり通りやすい状況がお膳立てされているものです。

仏教僧が座禅
写真=iStock.com/SAND555
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バッコ博士『教養としての建築』(かんき出版)
バッコ博士『教養としての建築』(かんき出版)

未知ゆえに間違うことはあります。ですが、無知ではいけません。この記事を読んでくれている方の多くは、「いい国(1192年)つくろう鎌倉幕府」と習ったことでしょう。しかし今では「いい箱(1185年)つくろう」と習います。常識は常に変化しているのです。

また、前提となる基準や法律を疑うことも重要です。本来の意味を取り違えていないか、初心に返って考えてみる必要があります。勝手な解釈をして、適用範囲を超えるような使い方をしていないでしょうか。

大事なのは「無知の知」です。「私はわかっていない」ということを知っている、という態度が間違いに気づかせてくれるはずです。

バッコ博士(ばっこはかせ)
構造設計一級建築士、京都大学博士(工学)、コンクリート主任技士

耐震工学のエキスパート。専門は超高層ビルの振動制御。大手建設会社にて構造設計および開発業務に従事。電波塔から超高層ビルまで、幅広い建物を担当。考案した独自の構造システムが超高層ビルに適用されている。免震・制振に関する特許出願は20件を超える。