なぜ小学校入学以降、空間認知能力で男女差が開いていくのか

分析の結果、まず、3歳から17歳の子ども・青年を対象にした研究でも、心的回転能力に性差が見られることが示されています。そして、重要なこととして、その性差は、小学校に入るまではそれほど大きくないのに対して、中高生になるくらいまでに拡大し続けるということです。その差は、ある統計値だと2〜3倍にも広がるようです。

研究によって、用いられる課題や心的回転をする対象は異なるのですが、そうしたものを考慮しても、この年齢による変化は、しっかりと認められます。つまり、年齢によって性差が拡大すると結論付けて差し支えないということです。

就学前に見られる小さな性差が就学とともに拡大していくことを考えると、就学前後に何か性差を生み出す要因がありそうです。

まず伝統的に重視されてきたのは、男児のほうが空間にかかわる活動を好むということです。たとえば、パズル遊びは、女児も男児も同程度するものの、男児が得意であり、その結果として後の心的回転能力が高いという研究結果があります。また、アクションゲームなどのゲームは空間認知能力を高めますが、こういうゲームも男児のほうが好みます。確かに、筆者も初期のファミコンやスーパーファミコンで「グラディウス」や「ストリートファイターII」などのアクションゲームを、下手ながらも好んでいた覚えがあります。これ以外にも、サッカーや野球などの空間認知が必須となるスポーツも、どちらかというと男児のほうが好むように思います。

ロボットの組み立てに没頭している女の子
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ジェンダーステレオタイプで女児には苦手意識が生まれる?

就学前後で性差が拡大するもう1つの理由は、ジェンダーステレオタイプです。前述のランドセル選びを含め、就学前後は自分の性別を意識するイベントが増加し、子ども自身がジェンダーステレオタイプを持つようになります。その結果として、女児が「女の子だから」というだけで空間認知に対して苦手意識を持つようになり、女児の空間認知の成績を低下させる可能性があると考えられています。

逆に、男児のほうは、得意だと考えるようになり、空間認知を発達させやすくなるのかもしれません。このようなステレオタイプの影響は年齢とともに蓄積し、女児が空間活動からより遠ざかり、性差が拡大する要因となるのです。