小学生のランドセルの色は、男児では黒系66%と青系19%だけで85%を占め、赤を選ぶ子はごく少数派。発達心理学の研究者・森口佑介さんは「戦隊ヒーローものの影響などで赤を選ぶ男児がもっと多くても、おかしくない。今の親の世代は、赤色のランドセルは女児という昔の記憶があり、その思い込みが子の選択を阻害しているのではないか」という――。

※本稿は、森口佑介『つくられる子どもの性差「女脳」「男脳」は存在しない』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

赤と黒のランドセル
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男の子と女の子には性差がある? ランドセルの色問題

日々の生活を通して、「子どもには厳然たる性差が存在する」と感じている人も多いでしょう。そのわかりやすい根拠として、子どもの色、おもちゃ、遊び、といったものの好みが挙げられます。

以前、子どもを持つ女性を主なターゲットとした雑誌にインタビューを受けたことがあります。その時のテーマが「息子が赤いランドセルを選ぶことを許容できるか」というものでした。

これは、実際にあったケースに基づいた記事でした。ランドセルといえば、小学校に入ること、つまり、子どもが大きくなったことの象徴です。値段も高いし、低学年の児童が持つには大きく、高学年の児童が持つには小さいこのかばんを購入することにどれだけの意義があるのか、気になるところもあります。とはいえ、祖父母などの親族がランドセルを購入することを喜ぶなど、社会的な意味合いとしてランドセルの必要性はまだ残っているのかな、などと思ったりもします。

昔はほぼ全女児が赤色のランドセルを選んでいたが…

筆者が小学生のころは、ほぼ100%女児は赤色、男児は黒色のランドセルで、私立の小学校に通う同じくらいの年齢の子どもの持つバッグを見てうらやましく思ったものです。ですが、ランドセルの色は、ここ数十年で多様性を増してきていて、ランドセルを選び、購入するまでの一連の活動を指す「ラン活」という言葉もあります。2024年5月のセイバン社の調査によれば、女児にはかなり多様性がある一方で、男児は比較的画一的なようです。

実際、男児では、黒系が66%、青系が19%で、この2つで85%を占めます。一方、女児では、ピンク系が27%、紫系21%、青系が15%、茶色系10%で、かつてはほとんどの女児が持っていた赤系はたったの7%です。

確かに、赤色のランドセルを持った女児を見ることは減りましたが、赤色のランドセルを持つ男児を見ることもそれほど多くありません。このような状況で、自分の息子が赤色のランドセルを選びたいと言ったときに、それを尊重できるかという問題です。