戦隊ものの主人公はたいていレッド、男が赤を選んでもいい
しかし、考えてみると、これは奇妙な問題です。男児が赤色を選ぶのはそれほど不思議なことではないはずです。戦隊もののエースはたいてい赤色ですし、サッカーではマンチェスター・ユナイテッド、リバプール、スペイン代表、浦和レッズ、野球でも広島カープやMLBのエンゼルスなど、赤色のユニフォームを着用しているチームは少なくありません。男児が赤色を好むことは、全然不思議ではないのです。
結局のところ、今の親の世代では、「赤色のランドセル=女児」という記憶があり、その思い込みが子どもの選択を阻害しています。小学校以降はより友達関係が大事になっているので、友達同士での同調圧力の中で、赤色を持つことが心配になるということもあるでしょう。
こういう問題が出てくるのは、子どもの好みに多様性が出てきたからかもしれません。では、子どもの色の好みは本当に多様なのでしょうか。
頭の中で3Dをイメージする空間認知能力には男女差がある
赤ちゃんの空間認知にかかわる心的回転能力(メンタルローテーション)には性差があります。ただし、その違いはわずかなものであることを説明してきました。心的回転とは、心の中で物体をイメージして、それを回転させること。たとえば、立方体の図形を見て、それを90度回転させたらどうなるかを想像して課題を遂行したり、画面上に提示された色々な角度の手が右手か左手かを判断する際に、頭の中で手を回したりするのが心的回転です。このわずかな性差が、大人で見られるようなそれなりの性差に、いつごろから広がっていくのでしょうか。
乳児期以降の研究は、主に3歳以降の研究になります。1.5歳から3歳の子どもを対象にした研究は1個しか報告されていません。この年齢の子どもを対象として心理学の研究を行うのは非常に難しいためです。失礼な話ですが、「魔の2歳児」という呼び名があるくらい、研究が成立しにくい年ごろです。
3歳以降の研究では、3歳から17歳までの3万613人の子どもを対象にしたメタ分析が報告されています。3歳以降の子どもでは、大人と全く一緒ではないものの、似たような課題を用いることができます。実はこの点はとても重要です。赤ちゃん研究と大人の研究では実験方法が違うので、直接的な比較ができません。赤ちゃんで心的回転能力の性差が小さいのは、大人と実験方法が違うからという可能性もあるのです。その意味で、3歳以降の研究は大人の研究と直接的に比較することができます。



